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或る旅館で見た夢【怖い話・短編】4-1

(本話の分量は、文庫本換算2ページ程です。)



今、部屋の時計は、深夜の1時半。重たい目をシパシパしつつ、歯を磨く。TVの音も耳に入るだけであって意味を得ない。

俺(男・22歳・大学生)は、冬休みを利用して、東北の田舎へと一人旅に来ていた。昼間は自然溢れる観光スポットを歩いて、夕方にこの高級旅館へ。

今日一日をぼんやりと思い出すに、壮大な湖の畔の散歩にも、旅館の山の幸溢れる料理にも雪山を眺めながらの露天温泉にも満足したというのが目立つ印象だ。ちょっとした憧れから奮発してこの高級旅館に宿泊したのだが、改めて部屋を見回すに、やはりビジネスホテルとは違う。落ち着いた色合いの畳、有名作家の手によるのだろうか?重みと迫力のある木彫りの熊、穏やかなる湖か池かに船を浮かべて釣りする人を描いた水墨画、畳エリア有りリクライニング有る窓際エリア有り10人で宿泊しても狭いと感じないだろう広さ。

やっとの思いで歯を磨き終える。TVの電源や部屋の灯りを消して布団に入った。



暗くて静かな部屋だと実感する。さっきまで流れていたTVの音はもうしない。俺自身動いてドタドタ言う音もない。季節は冬で、虫の鳴く声もしない。

目を閉じると、シンと静まっているその静けさが気になりだす。

目を開けてみるが、闇が何かの意図を持って俺を包み込んでいるような気がする。闇で見えない熊が動いている気もする、水墨画の船上の人は意思を持ってこちらを見つめている気もする。

そんなこんな怪談の類の恐怖が芽生えてきた。


それは救いなのか?賑やかなお隣さん|或る旅館で見た夢【怖い話・短編】4-2」へ。



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