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或る大学講師の成果【仕事の笑える?怖い話】

大学講師には其々、研究実績等が有ります。中には、妙な実績で大学講師になった者もいます。

この話は、或る大学講師の有する怪しい成果の話・笑える?話・ある意味怖い話です。分量は文庫本換算4ページ程です。(他は「本blog全記事の一覧」)





第一章:怪しい?講師A|或る大学講師の成果【仕事の笑える?怖い話】


俺の勤める大学には、違法ではないが、怪しい秘密を持つ講師が何人か存在する。

一人は、「個人自営業とネットメディア」の研究をしている商学部の講師だ。この講師を、仮に講師Aとしよう。


第二章:とんでもエピソード満載!講師Aのひととなり|或る大学講師の成果【仕事の笑える?怖い話】


講師Aと俺は、大学時代からの付き合い。大学時代には同サークルに入っていたし、その頃から今に至るまで、二人だけで飲みに行ったりもする。

そんなこんな、俺は講師Aの人となりをそれなりに知っている。

さっくり言うと「普通でないやつ」だ。エピソードを上げるときりがないが、大学時代のものをいくつか。


サークル合宿で、集合場所に一番に到着したのに、集合時間が迫るにつれて表情が緊張していって、挙句忘れ物の確認だの部屋に戻って、最後に集合。

同級生たちが就職活動でピリピリしている時も気持ちに余裕のある様子だったが、単に就職活動をしていないだけだった。

内定を得る同級生たちが増えてきた大学四年生の夏くらいに、「小説家になる」なんて、サークルのみんなに公言して、呆れられた。



そんな、普通じゃない講師Aだが、彼のことを好きだという、1歳下の後輩女子もいた。

(この後輩女子は、講師Aが小説家になると公言した約1年後、新卒でエンタメ業界に就職。

エンタメ業界に就職するような後輩女子にとって、講師Aの持つ独特の世界観や驚く言動も、面白いものと捉えていたのかもしれない。)

二人は恋愛関係まで発展したのかどうかは知らないが、二人で下校したり二人で昼食を取ったりの姿を、俺は目撃している。

ただ結局、後輩女子の恋心は、講師Aの度を過ぎた行いで、冷めたようだ。

講師Aの作っていた小説がエロ小説だと知って、ドン引きしたのだそう。



後輩女子にフラれたことを知って後のこと。俺は講師Aと飲んだ帰り、彼のアパートに泊まることになった。

講師Aがシャワーを浴びている時に、俺は彼の机の上の本立てに、何冊ものノートが並んでいるのが目についた。一冊を適当に取って、開いてみた。

内容からして、例の、エロ小説の原案だった。「年上のお姉さんに手ほどきされて」「女上司に認められた夜に」など設定文、さらに落書きのような絵、あちこちをつなぐ矢印。

内容を想像するに、アダルトビデオのパクリのよう。



俺は暇だったためか、興味が有ったわけではないものの、講師Aの部屋を探ってみた。

(講師Aは、部屋を探られて怒るタイプではないし、探られてまずいものがあるなら、俺を一人にしてシャワーを浴びないタイプと思う。もちろん、勝手に他人の部屋を探るのは良くない。)

すると、クローゼット内に段ボールが有った。蓋をガムテープで閉じられていないため、中を覗くと、大量のエロDVDだった。

DVDのパッケージを見ると、「女上司もの」「年上お姉さんもの」「社長の奥さんもの」等、当時大学生である講師Aにとって、年上ものが多かった。


もしかして。

後輩女子が講師Aを嫌った理由は、エロ小説を書いていることよりも、講師Aが年上女性へ憧れていると知ったため?



その後。大学を卒業した講師Aは、大学院に通うことに。

おそらく、就職できるあても目標も無いため、何となく大学院に通っただけだろう。

俺も大学院に進学したが、それは心理学者になるという志からだ。

そして今。講師Aも俺も、世間で「Fラン」と言われるこの大学で講師をしている。


第三章:疑惑の目?俺から講師Aへ|或る大学講師の成果【仕事の笑える?怖い話】


話を現在に戻す。

講師として勤める、講師A。研究対象は、先に書いたように、「個人自営業とインターネットメディアの戦略」。

だけど、講師Aがネットメディアの勉強をはじめた時期が、気になるのだ。

講師Aは、大学時代は東アジア史専攻だったが、大学院で商学を選考した。おそらく、大学時代に少しずつ商業や商業に関連するネットメディアの勉強をして、商学の大学院に進学をしたのだろう。



俺が思うに、講師Aの性格は、自身の興味がないと動かない。

よって、講師Aにとって、商学やネットメディアに興味を持つ何かが有ったはずだ。

俺の推測だが、講師Aは自身にとって興味有るエロ小説を書き続けたいために、あれこれ試行錯誤したところ、ネットメディアで販売をする方法を知っていったのではないか?また、販売戦略等も思い付いたのではないか?

さらに、販売に成功すると、それを元に商学の論文等を作成。ただし「エロ小説の販売方法」で論文を書くわけにもいかず、「個人自営業とネットメディア」等と、抽象的な表現を用いた?



そして、商学の大学院を出て商学の講師になったわけだが、今もエロ小説を書いて売っている可能性も有る。良い循環だもん。

好きなエロ小説を作成する→ネットメディアを通じてエロ小説を売る→商学の講師として良いデータを得られる→さらにエロ小説を売る手法を思い付く→さらにエロ小説を作成→…。

ここまでの俺の予想が正しければ、学生たちに対して、エロ小説販売でのエッセンスを講義していることになる。もちろん、エロ小説の部分なら覆って。

日常に潜む怖い話の一つだろう。


第四章:俺も怪しい奴?|或る大学講師の成果【仕事の笑える?怖い話】


ところで。

本話の冒頭に「俺の勤める大学には、違法ではないが、怪しい秘密を持つ講師が、何人か存在する」と書いた。

講師A以外にも秘密を持つ講師がいるわけだ。

それは、俺のことだ。



俺は、心理学の講師だ。

恋愛心理の研究において、俺の手法の一つは、男性用エロDVDと女性用エロDVDの分析だ。

これらの分析によって、男性の持つ恋愛ニーズの一つや女性の持つ恋愛ニーズの一つを分析するのである。


また、俺は、心理の達人だから心理学の講師になれたのではない。どちらかと言うと、コミュニケーションが苦手だ。

恋愛経験だって、欲求不満の女性に遊ばれた経験や次の本恋愛へのつなぎに利用されたような経験ばかりだ。

だから、必死になって心理学を勉強した。

俺の弱さが、俺の仕事を、切り開いたかもしれない。



心理学講師の仕事上で、学生に対して申し訳ないと思う場面も有る。

結局のところ、俺は今も大した恋愛なんてしていない。「恋愛心理学をマスターして、恋愛小説のような恋愛すら自由自在に操れる」なんてことはない。

なのに学生の中には、俺を恋愛上手だと信じている者もいるし、俺に本気の恋愛相談をしてくる学生もいる。俺は、達人の振りをしてアドバイスをする。

そんな俺自身に対して、日常に潜む怖い話の一つとも思ってしまう。まあ、学生の反応からして、それなりに役立ってはいるみたいだ。


以上「或る大学講師の成果【仕事の笑える?怖い話】」。



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