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ゴリラ?或る田舎の目撃談【怪奇話】

この話は、『土の記憶?奇妙な旅行にて【怪奇話】』の続きです。

或る田舎にて、奇妙な生物の目撃談をめぐる話(ファンタジー怪奇)です。果たして、人々の目から潜んで動くその生物は、人類の友か競争相手か?


(分量は文庫本換算6ページ程。以下の目次をクリック・タップするとジャンプできるのでしおりの代わりにどうぞ。他の話は「本blog全記事の一覧」へ。)




第一章:『土の記憶』を研究|ゴリラ?或る田舎の目撃談【怪奇話】


俺(駿河台辰実・30歳・獣医師)は、旅行から帰宅して後も、「土の記憶?奇妙な旅行にて【幻想ホラー小説】」で体験したことをずっと気にしていた。

『土の記憶』とは何なのか?単なるうたた寝の夢だったのか?それにしては映像を鮮明に覚えているし、自由に動き回れた印象だ。

自分の精神を病んでしまったという不安が無いわけではないが、それよりも、自分の脳等に何が起こっていたのか、理科学的興味も有るのだ。

また、『土の記憶』で目撃したゴリラのような生物とINBOU(雑誌&サイト)の記述は、関連有るのだろうか?

そんなこんな俺は、仕事終わりや休日等に『土の記憶』について、研究のようなことをしていた。



精神・神経科医ならば何かアドバイスをもらえるかと思い至って、今、自宅マンション近くの精神神経科を訪れた。(予約の上でのこと。また、あくまでも、患者として受診する。)



名前を呼ばれて、診察室へ入った。

俺を診察するのは、葦笛明(あしぶえあきら)という精神神経科医だった。同い年くらいの男だ。

一通りの質問を受けて後に、俺は『土の記憶』での体験をしゃべった。



葦笛明は、『土の記憶』について、一通り聞いてくれた。

ただし、結論は出なかった。現場にいなかった以上は、何とも言えないと言う。まあ、当たり前か。



だが、気になる情報も得られた。

俺が、『土の記憶』について、俺以外にも似た症例は有るか?と尋ねると、あくまでも似ているだけで同じとは断定できないと前置きの上で、有ると言ったのだ。さらには、話しの内容まで似ているとも。

そして、精神科医として、話しをまとめてくれた、「同じような症例の有った者たちは、その後に精神的な不具合等は見られない。だから、駿河台さんも安心すれば良い。そのメカニズムについてはよくはわからない」と。

それから、葦笛明は俺の脈拍や瞳孔等精神神経作用のチェックもしたが、異常は見られないという。




第二章:その精神科医は知っている|ゴリラ?或る田舎の目撃談【怪奇話】


俺(葦笛明・32歳・精神神経科医並びに臨床心理士)は、今、駿河台辰実という男の診察を終えた。

駿河台辰実の視線、挙動、瞳孔の様子、脈拍、問診内容などなど、どれをみても精神や神経の不具合は見当たらなかった。

ただ、駿河台辰実が俺に語った『土の記憶』というのは、以前に違う患者も語っていた。また、内容も一致している。そのことは奇妙に思った。

俺は、先程の診察時に、駿河台辰実が俺に述べた場面を思い出してみた―



駿河台辰実は言った、

「旅館で妙な男に出会った。土や石たちに刻まれた自然の作用を、映像や音等に変換したので、感じ取ってくれと言われた。

半信半疑だったが、妙な男の言うように目を瞑って周囲に意識を集中すると、大きな池とその畔の古い城のようなものの有る景色に立っていた。

城のような建造物に入ってうろうろしていたが、ゴトンという大きな音がしたため、音のした方に行くと、ゴリラのような生物が倒れていて側に毒物と思われるものが入った瓶が落ちていた。

また、一見ではゴリラと思った生物は、脚は長い上に額は広くて頭は大きいのでゴリラではない。

それから、『土の記憶』は覚めた」と。―



俺には、駿河台辰実に言っていないことが有る。

駿河台辰実は、ゴリラのような生物の登場にびっくりして『土の記憶』から覚めたようだが、違う患者に、その先まで見た者もいたのだ。



その患者が言うには、メスと子どもの「ゴリラのような生物」が登場したそうだ。

倒れている「ゴリラのような生物」を見て、メスと子どもは慌てて駆け寄った。

何を言っているかわからないけど、倒れている「ゴリラのような生物」に対し、ことばのようなものをかけて後に、感情を爆発させるように言動は制御不能となった。ヒトでいう、泣くという状態かもしれないと思ったそうだ。

しばらくすると、メスの「ゴリラのような生物」は、決意したような表情を作って感情を鎮めて、未だに感情的な子どもに何かを強く語った。子どもも何かを決意したようで、泣きながら頷いたそうだ。



その辺りまでのはず。俺の診察した患者で最も長く『土の記憶』にとどまったのは。



『土の記憶』とやらのメカニズム等を探る必要もあるが、それは精神神経科医師として日々務めている俺にはできない。

多摩文理大学の心理学研究室や生物学研究室にツテも有るので、研究依頼をすることにした。


第三章:謎のゴリラ?の研究|ゴリラ?或る田舎の目撃談【怪奇話】


その日、俺(稲岡良仁・29歳・多摩文理大学考古学研究科講師)のもとに、多摩文理大学の心理学と生物学の合同チームから、電話が入った。

考古学者の俺のアドバイスが欲しかったようで、旧石器時代に文明が築かれていたなんてことはあるか?と聞かれた。

俺が応えようとすると矢継ぎ早に言う、「現生人つまりサピエンス種によるものでなくてヒト属祖先の文明或いはゴリラ属の進化した生物による文明なんて…。

私は信じてはいないけどね、精神神経学・心理学・生物学の研究で、オカルト雑誌まで探る必要も出てきたようで」と。



この質問に対して、俺(稲岡良仁)は、多摩文理大学の講師になる前ならば、笑いながら否定していた。

だが俺は、数年前、多摩文理大学図書館整理をさせられた時、ヒト祖先と分類するべきかゴリラ等類人猿と分類するべきか結論の出ていない化石についての、古いレポートを見つけた。

1900年代前半に、多摩文理大学に在籍した教授が書いたものだ。本人は、その化石の発見者でも研究者でもない。ただ、その化石を発見並びに研究した友人教授のことを、記してあるのだ。

「どこかの山でその化石を発見したらしい」「ゴリラの骨格との類似点も多いと述べていた」「化石だけでなくガラス片や金属の釣り針も見つけたそうだ」と書いてあった。

そこで俺は、化石を発見した教授の名を覚えて、その教授自身が作成した論文を探した。多摩文理大学博物館には、その教授の作成した多くの論文が所蔵されていた。なのに、その化石についてのものとなると、一切無い。意図的にレポートや論文を隠蔽しているような気もした。



今回の心理学生物学合同チームの質問と、俺(稲岡良仁)の思っている謎の化石のことは、何か関係が有るのだろうか?

応えに窮していた俺だが、「基本的にはあり得ない」とだけ伝えておいた。


第四章:或る小学生の目撃談|ゴリラ?或る田舎の目撃談【怪奇話】


俺(駿河台辰実・30歳・獣医師)は、精神神経科医の診察を受けてから一か月程経つ。

未だ、『土の記憶』のメカニズムやゴリラのような謎の生物のことはまだ未解明だ。

それどころか、さらに解決すべき問題も生じたのだ。

今、仕事は昼休み。

休憩室で昼食を終えた俺は一人、ぼ~っと窓の外を眺めつつ、その新たなる問題について、想像を巡らせている。



二週間程前の仕事中に、ニホンザルによるちょっとした事件が起きたのだ。

俺の勤めている動物病院は、都内ではあっても都心からはとても遠い、田舎町に有る。スーパーや本屋等、生活に困らない程に店は揃っているものの、各店の規模は小さいし、店と店の間は車が必要な程に飛び飛び。また、街エリアから少し遠ざかるだけで、田畑の広がる農村。

農村では、田畑が野生動物に荒らされることも、時々ある。ニホンザルに関する事件が起こること自体は、珍しくはない。



ただし、その日のニホンザルの様子は違った。ヒトに対する警戒心を感じないどころか、ド派手な動きをしていた。

それも、一匹二匹ではない。また、一部のエリア限定ではない。白昼堂々、ニホンザルは、農村エリアにも街エリアにも同時に表れて、田畑やら商店を荒らしたのだ。

幸い、人への危害は、知る限り無かった。

街エリアの動物病院にいた俺も、外が騒がしいため窓から覗くと、ニホンザル数匹駆けているのが見えた。

街エリアに有る警察署には多数の通報があり、署内は軽いパニックとなった。出動やら対処やらに、遅れは出てしまった。

ニホンザルに接近された人の中に、大声を出したり威嚇したりした者もいたが、なぜか、恐れる様子は全く無かったそうだ。まるでサーカス団に所属するニホンザルサルのように、人に慣れている様子だったそう。

ニホンザルがこのような行動を取ったのは、過去にも現在にもこの時のみだった。



獣医師の俺は、ニホンザルの本事項に興味を持った。事件後、マスコミニュースや警察発表の情報等を調べてみた。

すると、ニホンザル襲来の日に奇妙な空き巣事件も起きていたのだ。

被害に遭ったのは、本屋だ。

ほとんど店主一人で切り盛りしている本屋だが、外が騒がしいために店主は店を出て、無人にしてしまった。その隙に、本が大量に盗まれたのだ。

本のジャンルは、物理学・数学・コンピューター・通信技術・語学関係の書物だった。



さらに、本屋の向かいの家には、風邪で学校を休んでいた7歳の小学生が居たようだ。

聞き込み調査に訪れた警察に対してその小学生は、「本屋からゴリラ人間が5人、大きな袋を背負って出てきた」と証言しているという。

小学生の両親は警察に対して、「幼い上に風邪で高熱でもあったので、証言を真に受けないでください」と言っているとのこと。



俺は今、窓の外をぼ~っと眺めつつ、小学生の証言を、『土の記憶』と重ねてしまった。

小学生は「ゴリラ人間」と表現している。俺は『土の記憶』で見た生物をゴリラであると見間違えた。

仮に小学生の言う「ゴリラ人間」と「俺が『土の記憶』で見た生物」を、同種の生物だとしよう。

また『土の記憶』を見せてくれた妙な男を信じるなら、『土の記憶』は過去地球において実際に有ったものだ。つまり『土の記憶』で見たゴリラのような生物は、過去地球に存在した生物となる。

となると、現在その子孫がこの地球上に存在する可能性も有る。小学生の言う「ゴリラ人間」の正体か?

でも、一般的にそんな生物は知られていない。そんな生物が存在するとしたら、一目につかない山奥だったりだろう。

それなら、山奥で暮らす中で、ニホンザルと接触して手なずけているなんてことも有り得るのかもしれない。

それと、『土の記憶』で見た生物は城作りや養殖もできる高知能生物だ。ならば、その子孫も同じような高知能である可能性は高くて、山に有る植物から薬を作る知識も有るかもしれない。興奮させる薬、判断力を鈍らせて従順にさせる薬を作って、ニホンザルに与えていたなら…。

そして、ニホンザルに騒ぎを起こさせる。その隙に、物理学・数学・コンピューター・通信技術・語学の本を盗んだ…。



そこまで想像して、俺は頭を振った。一人で笑った。SFじみている。



何にせよ、ニホンザルにも目立った健康被害報告はないようだ。獣医師としてもほっとしている。

それにしても旅館で出会ったあの男は、なぜ俺に『土の記憶』なんて見せた?いったい、俺に何を伝えたかった?


以上「ゴリラ?或る田舎の目撃談【怪奇話】」。

続きは、「今年こそはあの川が出来る?奇妙な魚たち【怪奇話】」へ。



※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。

※本ブログの記事は全て著作権によって保護されておりますことへのご理解をお願い申し上げます。


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