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5-5妙な連絡|或る農村を夢に見る【短編怪奇小説】

(他ページは5-15-25-35-45-5)



日も正午に向かって高くなっている頃、俺は起きた。

本日は、フリーライターの日。ストレッチだのコーヒーだの歯磨きだの、準備して後に仕事を開始。予備校仕事と違って、時間を気にすることはない。

仕事をしていると、母から連絡は有った。97歳の祖母のことでだ。高齢の祖母は、座ってTVを見ていると思ったら寝ていたり、会話途中に寝はじめたり、一日の内何時間はっきりした頭でいるのかわからない。そんな祖母が珍しく、途中で寝ずにはきはきと真剣に語ったそうで、しまも俺に関わることだったので連絡してきたそう。

「ばあちゃん、言ってたよ。『秀行はひいじいさんに瓜二つって。

ばあちゃんが嫁いだ時、義理のひいじいさんは90歳を超えてて、毎日酒が飲みたいって。貧乏百姓だったから飲めるわけもないのに、うるさかったって。

だけど年に何度か、村の祭りや結婚式等で酒を飲めたらしくてね、それだけが楽しみのように長生きをして。村のお金で買ったお酒をいっぱい飲んだそうで家の者みんな肩身狭かったんだって。それで、行事のたびに余分にお金を納めたり、集まるたびに嫌味を言われたりって。

ひいじいさんが90歳くらいの時に村の若夫婦の結婚式があったそうな。酒を飲みたくてウズウズしてたせいか、宴会でお酒を飲むぞって時にぽっくり逝っちゃったそう。

ばあちゃん、かわいそうには思ったけど正直やれやれと思ったてよ。ひいばあさんも、葬式の後になってぽろっと言ったんだって、じいさんよりも長生きできてよかったって。

でね、ここ一週間くらい、ばあちゃん、なぜかひいじいさんの夢を見ているんだって。ひいじいさんが言うには、子孫が酒を飲む姿を見ると安心するのに、わざと飲まない奴もいる、それが秀行だって。禁酒でもしてんの?で、ひいじいさん、ばあちゃんね言うんだって、わしにも秀行にも会ったあんたの口から言え、毎日飲めることのありがたさをなんて」。

スピーカーにしたスマホを傍らに、適当に返事をしつつシナリオを書いていた。ふと、祖母の顔を浮かべた時に閃いた、夢で見た給仕のような役割をしていた若い女性って、祖母と似ていると。



その晩。のど越し良いビールや江戸時代から続く古い技法のにごり酒を並べた。

そして、先祖様を思いつつ、飲んだ。爽快感や幸福感は、広がった。

晩酌を終えると歯を磨いて布団に入って電気を消す。

ふと目覚めると、朝日がカーテンから差し込んでいた。久しぶりの、爽やかな目覚めだった。何の因果関係だろう、江戸時代の農村の夢も見なかった。


以上、「或る農村を夢に見る【短編怪奇小説】」。



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