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深夜の視線と鳴りやまないインターホン【怪談】

この話は、覗き男が遠くに在るマンションの怪奇的秘密を知ってしまったために、毎週金曜日にお金を脅し取られる話です。

果たして、男が目撃した怪奇とは?



(分量は文庫本換算6ページ程ですが、以下目次をタップ・クリックでジャンプできるので、しおり代わりにどうぞ。他の話は「本blog全記事の一覧」へ。)




第一章:深夜の勤務中に|深夜の視線と鳴りやまないインターホン【怪談】


夏の金曜日の深夜2時。

俺(麦倉行・警察官・29歳)は、交番にて夜勤に臨んでいた。

デスクに座って、書類を作成している。



この交番は、市中心部の駅から一つ隣の駅の前に有る。

駅周辺は、住宅街だ。交番からの眺めは、中低層マンション、アパート、戸建て住宅が目立つ。それら合間に、小さな飲み屋やコンビニ、スーパー等もちらほら。

ただし、営業時間を終えて、シャッターの降りた店も多い。コンビニ等24時間営業の店の前のみ、明るく照らされている。

交番横の駅も、もう終電は出た。電気も消えていて、駅舎も線路も暗い。寝静まっているよう。

時々、外で楽しげな話し声がする。おそらく、終電を逃した者ただ。タクシーで、この寝床の街に降り立ったのだろう。しばらく陽気にしゃべっていても、すぐに自宅マンション等へと解散して、静まる。

街なので、全くシンとすることはないが、総じて静かだ。



そうした中。

「すいません、いいですか」と、若い男が、慌ただしく交番に駆け込んで来た。



見たところ、大学生か新人社会人か?

俺は、事務作業の手を止めて、立ち上がって応じる、「どうしました?」。

奥の部屋で休んでいた同僚も出てきたが、俺は同僚を制して、部屋で休んでいるよう、ジェスチャーした。



その男を、向かい合う椅子に座らせてから、俺も座り直した。

男はしゃべりだす、「どう言ったらいいか、或る女から金を脅し取られているんです」。


第二章:覗き男の話し①(遠くマンションで見た怪奇)|深夜の視線と鳴りやまないインターホン【怪談】


「女?失礼ですけど、どういうご関係の?」、俺は尋ねた。

男は、不都合なことを聞かれたように、挙動が不安定になりつつ、「う~ん、そもそも名前も知らない…」等と、奇妙なことを言う。

「失礼ですが、何を脅しネタにされているんでしょうか?」俺は尋ねた。

男は、観念した表情になって、しゃべりだす、


「どこからしゃべればいいんだろう、時系列のまましゃべります。

もともと、いけないのは俺なんです。

社会人になって、給料は、毎月何万円も余るようになった。

調子に乗って、キャバクラなんかに出入りするようになった。

でも、キャバクラは、仕事と割り切った感じの女の子ばかりに当たって、何ていうか、ドキドキは無い。恋愛感は無い。

その…彼女もいるんですけどね。こちらは慣れちゃってつまらないというか。



或る日の帰宅途中。

メチャクチャ好みのタイプの美女が、自身ののマンションだろう、入っていくのを見て…その…久しぶりにドキドキしたな。



でも、ナンパするのも怖いというか、勇気もないというか、モヤモヤして、それで…。

その美女の生活を覗けば、多少はモヤモヤも収まるかななんて…。



位置的に、俺の住んでいるアパートから、望遠鏡を使えば、この美女の部屋を覗けると思って…。

もちろん、犯罪はダメだってわかっていますからね。その上で『故意に覗くのでは無くて、自宅アパートの窓から望遠鏡の性能を調べるために使用してみた』という体裁です。」

男は、いったん話しを切る。警察官の俺に対して、「だから逮捕しませんよね」というアピールをしてくる。強気と恐れと、ごちゃまぜになった表情だ。

俺は男に対して、「なるほどね」とテキトーに頷いて、先を促す。



男は続ける、

「後日、仕事帰り、それなりに高級な望遠鏡を購入した。



それで、自宅アパートの窓から、望遠鏡をのぞいてみたんです。性能を試すべく。

遠くのマンションでも、窓のカーテンレールまではっきり見えた。すごいと思った。



それから今度は、自宅アパートの屋上に上った。

まずは、肉眼で周囲を見回す。

近隣にはアパートもマンションたくさん立っているけど、高くて10Fくらい。遠くを見通すのを、遮られることもなくて、隣駅や周辺中心街までもを見通せる。

市中心街には、高層マンションがいくつも立っていて、目立つ。



近くのアパートも遠くのマンションも、夜なので、窓や廊下に明かりが灯っている。

中心街の高層マンションも、地平線を意識する程に遠いけど、豆粒ほどの大きさくらいには、灯りは見える。

大抵、黄色や白の灯りがズラリと並んでいる。

だけど、中心街の高層マンションの一室に、明らかに青とわかる輝きが見えた。一か所だけ青。不自然で目立った。

俺は気になったので、青い光の方へ望遠鏡を向けて、覗いたんです」

男は、いったん間を置く。


第三章:覗き男の話し②(鳴りやまないインターホン)|深夜の視線と鳴りやまないインターホン【怪談】


男は、しゃべりを再開する、

「青い光に、望遠鏡を向けて覗く。

カーテンを閉めていないマンションの窓だと、わかった。

青いライトで部屋を照らしている上に、部屋中真っ青の壁だった。

さらに、色とりどりのライトが、艶めかしく移り変わっている。雰囲気は良かった。俺は、少し期待した。



しばらくすると、バスタオルを巻いただけのロン毛の女が現れた。

こちら側に向かって歩いて来たのだけど、首を左に向けていて、顔はよく捉えられない。左側にTVでも有るのかな?

窓まで来て立ち止まって、顔を向けていた方に身体も向けて、つまり右半身をこっちに向けて、ストレッチのようなものをはじめた。

髪艶は綺麗で、スラッとした体型。印象としては美女だ。

俺はバスタオルが取れないかと、期待した。



そして、右肩のストレッチの流れで、美女は窓につまりこっちに、顔を向けた。

その顔…やはり美女だった。一部を除いたらなら。

鷲のような鋭い目をして、肉食爬虫類のようにさけた口、そして、長い舌をしまいきれないようにベロンと出している。

俺は驚いて、思わず声をあげてしまった。また、望遠鏡も落としてしまった。」



男は、いったん話しを切る。恐ろしい記憶を思い出したのか、怯えた声に変わってしゃべり出す、

「俺は、望遠鏡を拾い上げて、再びそのマンションの部屋を見たんだ。



するとその美女は、俺が再び望遠鏡を覗くことを待っていたかのように、窓際に立っていた。望遠鏡越しに目が合った。そしてニッと笑った。それから、手招きしてきたんだ。

俺は、望遠鏡から顔を上げて、肉眼で美女のいるマンションの部屋の窓を見る。

豆粒程のぼんやりした光のみであって、もはや窓からの灯りか廊下の灯りかも判別できない。まして、女が立っているなんて、わからない。

俺はまた、望遠鏡で青い光を見る。

美女は変わらず、望遠鏡を通して俺と目を合わせてくる。そして手招きをする。

あの美女は、驚異的視力で俺の存在を捉えていた、そういうことだろ!



俺は、怖さに耐えられなくなって、屋上から自室に戻った。

部屋に戻ってからも、電気を付けられなかった。

あの美女の部屋は、俺の部屋の窓の方向に有る。屋上から引っ込んですぐに電気をつけたら、俺の部屋を教えているようなもんだろう。



俺は、カーテンを閉めた。

深夜2時を過ぎていたこともあり、布団をかぶった。

暗い部屋の中で、あの美女がカーテン越しにこの部屋を見ていると思うと、恐ろしくて、寝られなかった。


30分くらい経ったかな、いきなりインターホンが鳴った。

飛び上がる程にびっくりした。時計を見ると、3時前だった。

こんな時間に訪問者なんて、今まで無かった。あの美女ではないか?


放っていると、またインターホンは鳴った。

静まった真っ暗なアパートに、何度も何度もインターホンの電子音は響く。俺を、脅迫するようだった。

逃れられないと思った俺は、起きて玄関に行った。玄関ドアの覗き穴を、覗いた…。


やはり、さっき望遠鏡で見た美女が立っているんだ。

今度は、目の前ではっきり見た。やはり、鷲のような鋭い目、肉食爬虫類のような口と牙と長い舌だった」。

ここまで言って、男は怯えるように黙った。



「ドアを開けたんですか?」と、俺(麦倉行)は尋ねた。

「開けるわけないだろ、化け物みたいな相手なんだぞ」と、男は応えて、また続ける、



「開けたなら何をされるだろう。


どうしようもなく部屋の奥に戻ると、ふと財布が目についた。中を確かめると、2万円有った。『ごめんなさい』というメモを添えて、玄関ドアの隙間から、その美女に差し出した。


すると、その日はもう、インターホンは鳴らなかった」


「『その日は』ねえ」、俺は先読みして、繰り返した。


第四章:怪奇の正体?深夜に出会った美女|深夜の視線と鳴りやまないインターホン【怪談】


男は真剣な表情で続ける、「そう、その日だけじゃなかった」。



その後の男の話しを、まとめる。

その日から今日に至るまで、1か月くらい経っている。その美女は、毎週金曜日深夜に、インターホンを鳴らしに来る。お金を払うと帰る。合計10万円程を取られたようだ。

警察官である俺に、その美女に対して、もう来ないでくれと言ってほしい、とのこと。



さて、俺はどうすれば良い?

男は、覗きについては否定している。女は、「金を出せ」と述べたわけでもない。犯罪の取り締まりでなくて、トラブルの仲介になりそうだ。

ただ、男の話しは本当なのか?トンデモオカルトのようでもある。

男の話しは嘘で、警察をからかったり、何等かの目的でどこかに連れたい恐れもある。



俺は男に、女の存在を証明するものはないか?と尋ねる。

男は、玄関ドアの覗き穴越しに撮った、スマホの写真を見せてくる。

どの画像も、横顔ばかり。普通の女に見える。「証明にならない」と伝える。

その後のやり取りの結果、男が朝まで交番付近に居させてもらう、ということで話しはついた。



男は、朝まで俺の見える範囲をウロウロして、帰宅した。


その次の週も、その次の週も、毎週金曜日に男は交番に表れた。俺が居る時もあれば、居ない時もあった。

俺は、時々話しもした。男の住所もわかった。



ところが、一か月くらい経った頃、男は来なくなった。

解決したのだろうか?



気になった俺は、次の自転車パトロールの時に、男のアパートに行ってみた。たまたまだが、金曜日午前3時だった。

1Fに有る部屋前まで行くと、郵便受けに仲介業者の名前入りのガムテープが張ってあった。

どうやら、引っ越したようだ。



それから、パトロールの続きへとアパートを出る。その時、一人の女が入れ違いに入って行った。

髪艶や体型等、職業モデルのようにすら見える。

顔は…。

鷲のように鋭い目つきだ。マスクをしているので、口はわからない。美女には違いない。


吹き曝しの廊下なので、アパートの外からでも、廊下を歩く女を見通せる。俺は、自転車のロックを外したりしつつ、横眼で女を追う。

女は、男の部屋の前に立つ。

郵便受けにガムテープが貼ってあるのに気が付くと、Uターンしてアパートを出てきた。



俺は、出てきた女に、「その部屋の方に御用ですか?」と声をかけた。

女は立ち止まって、俺の方を向く。5mくらい距離は有るが、女は目を俺と目を合わせずに、俺の頭の上辺りに視線を向けて、目や首をきょろきょろしている。


「引っ越した見たいですね」、俺は続ける。

女は、一例して立ち去った。


その背を見送っていた俺だが、首の辺りがチクッとした。反射で払うと、ぷ~んという音がした。

蚊だ!おのれ!と思ったが、もう遅い。暗闇に紛れて、もう追えない。


諦めつつ、俺は、はっとした。

あの女、俺の周りを飛ぶ蚊を追って、きょろきょろしていた?


以上、「深夜の視線と鳴りやまないインターホン【怪談】」。



※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。

※本ブログの記事は全て著作権によって保護されておりますことへのご理解をお願い申し上げます。


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