星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】
この話は、仕事帰りに星空を眺めていたひと時の、嬉しいけれど不気味な話です。
(分量は文庫本換算5P程です。他の話は「本blog全記事の一覧」へ。)
或る金曜日の仕事帰りのこと。俺(米津秀行・28歳)は、自宅アパートの建つ丘に巡らされた道たちの中で、アパート棟への階段道ではなくて、丘頂上の展望広場への土の道を歩いた。仕事帰りのちょっとした幻想旅行とでも呼ぼうか。またその旅行の中で、あの美女に会えるかもしれない期待もありつつ。
丘頂上へ向かうこの道は、自宅アパートへの道から分岐する。土の狭い道であり、丘の内で木々の茂るエリアに分け入るように伸びているため、左右には数えきれない程の木々が奥を見通せない程に思い思いに立っている。
そんな木々が、嵐の残していった生暖かい暴風で絶えずざわめいている。時折、突風のような強い風が吹くと、ザワザワ、ゴトンゴトンとまるで歓声のようだ。ボトッと木の実だろう落ちる音もする。
歩きつつ、空を見上げる。黒いシルエットとなっている木々の間から、紺色の夜空が、木々の動きに合わせて見え隠れする。満月もまたチラチラ覗ける。夜空は、金色に輝く月周囲から順に、紫~紺のグラデーションで、数限りない恒星たちが金粉のように散在している。灰色の千切れ雲は、暴風のためだろう、飛行機を目で追うようなスピードで流れている。
小道を歩いていると、木々は開けた。月の薄明りに照らされる平地、丘の頂上だ。俺は、高い空に包まれた。真上程の位置に月は浮かんでいて、その月から天球を辿るようにして正面へと視線をズラしていくと、地平線のさらにずっと先まで天球は広がる。天球のどこでも、星々は浮かんでいる。手前、地平線にも遠く及ばない小さな街が山に囲まれつつ、こじんまりと日常馴染みある灯りで輝いている。
宇宙の壮大さを感じることや宇宙の光を感じることは、人の作った文明社会にて生きる日常においてはあまり無い体験だ。目の前の風景は、日常から離れた気分にさせるものとも言える。これが、俺にとっての、心のプチ旅行の一つだ。
丘頂上は、整備されている公園エリアと、その外の整備されていないエリアとに、木の手すりによって区切られている。整備されていないエリアを見やると、草原が広がっていて、ところどころに木も立っており、生暖かい暴風によって、海の波ように靡いた。俺は、そちらへと、公園ベンチを通り過ぎて歩いて、木の手すりの前に立つ。
さて、プチ旅行のお伴の出番だ。コンビニで買った芋焼酎の炭酸割りの缶を鞄から取り出して、プシュッと言わせた。まずは一口目だ。生暖かい風の中で、冷えた炭酸は、喉に対して爽快な刺激をもたらした。アルコール度数7%。しばらくして、身体にはびりびりと違う刺激も走る。それから、手すりを焼酎缶置き場にして、草原や夜空やを眺めたりした。
その時、すぐ背後で足音が聞こえた。
びっくりして振り返ると、例の美女だった。長身で切れ長の目つきをした美女であり、30歳前後だろう。俺は、想定外のこの事態に、どんな言動を取るべきかわからずに、立ち尽くしてしまう。先週もその前の週の金曜日も、俺がこうして丘頂上の広場で一杯飲んでいると、いつの間にやら彼女が居る(まるで野生の獣が密かに様子を窺ってくるように)のだが、いつも遠目に見るくらいで、話したことは無い。
今、彼女は振り返った俺と目が合うと、ニコッと笑いかけてきた。俺はドキッとして、さらにどうするべきかもわからず、目を泳がせながら首で挨拶するのみだった。彼女は「金曜日によく会いますね」と言って来た。俺は「ええ」以外に応えられない。彼女は「いいですね。星空を見ながらお酒なんて」と言いつつ、手すりへ歩いて、手を置いて夜空を見上げる。
整理のつかない俺だが、星空を見上げる彼女の横顔を見ていると閃いた。そうだ、高校時代に憧れていた先輩に似た系統の顔つきだ。
彼女は見上げていた顔を俺に向ける。俺は、ドギマギしつつ、目をそらしてしまった。彼女は「焼酎をお好きなんですか?」と続ける。俺が彼女の顔を見直すと、彼女の目線は手すりに置いてある缶へと移っていた。「私は芋焼酎を得意ではないですけどね」と続ける。俺は「でも、この焼酎は臭みは抑えられているんですよ。マスカットのような香りで、飲みやすいですよ」と、売り場に書いてあったことを述べた。彼女は「へー。今度私も挑戦してみようかな」なんて言う。
それから、いつの間にか俺のドギマギは薄れて、気づくと意味のないことを話していた。話していると、彼女は俺に何度かボディタッチもしてきた。そのたびに思わずドキッとして、心地の良い息苦しさも沸いた。
話しのきりの良いところで、彼女はニコッと切れ長の目と口元を崩して「それじゃあね」と言って、行ってしまった。俺は遠のく彼女の背中を、見送っていた。
年上美女や人妻に憧れるものの、今のところそのような女性とは付き合ったことは無い。今、そんな女性と二人っきりで話しをしたにも関わらず、ナンパ一つできなかったことを後悔してしまう。これからも憧れを果たせずに過ごすんだろうな。彼女は公園出入口の小道へと足を踏み入れて、姿は見えなくなった。
それから俺は、芋焼酎缶を飲み干して、アパートへと帰宅した。
翌日。俺は小説家を目指してもいるのだが、六時間程小説を書いた。理科学が原子分子を発見したことによって従来だと幽霊の仕業と思われていた現象の一つを解決するが、一方で原子分子自体が新たな謎ともなり、そんな謎に幽霊だの怪奇だのを見出すために、人と幽霊の関係はいつまで経っても切れないなんて内容だ。
小説を書いたり家事をしたりしている内に、いつの間にか夕方になっていた。俺は夕食の材料を調達するため、昨日のコンビニかその近くのスーパーへと玄関を出た。
丘斜面の階段を降りていると、丘頂上への小道との合流点が見えて来た。そこに作業服を着た人が数人、作業をしているのが見える。抱えていた看板を置く者やらその看板を倒れないよう立っている木の幹に針金を巻き付けて固定する者やら指示を出す者。
俺は歩きながら、看板の文字を目で追った。「狐に注意」とある。
俺は一人の作業員の隣で立ち止まり、「狐の目撃でもありましたか?」と尋ねる。
その作業員は応える、「丘頂上に公園があるだろ?そこのベンチに座ってスマホをいじっていた男が忍び寄って来た狐にポケットの財布をひっぱり出されたって。男が気づいた時には、もう狐は財布を咥えて逃げて行ったけれど、男は追いつけないまでも逃げた方に歩いていくと、道路に財布は落ちていたんだって。カード等いろいろと無事だったけど、おさつは抜き取られていたそう」と。俺は頷きながら聞いていたが作業員は付け加えて、「狐さんがお金を使うのかね?」と笑った。
俺が「この丘には野生動物も多いみたいですけど、人に近づくなんて珍しいですね」と言うと、作業員は「確かにな。野生動物と人間の距離が近くなったとしたら、良くないね」と。
それから俺は、キリのよいところで話しを切り上げて、買い物へと階段を降りた。
スーパーでの買い物。店内を、いつも通り入口からコの字に回る。野菜のコーナーではピーマンが目に付いたが、まだアパートに残っている。魚コーナーで戻りガツオの刺身、肉のコーナーでウインナー、それからお酒のコーナーでは現在芋焼酎コーナーを片っ端から制覇しようとしているため前回の隣のもの、惣菜コーナーでは大根や胡瓜の糠漬け、その横のパンコーナーで甘栗デニッシュ、その近くに特設で置いて有ったご当地もののカップラーメンなどなど、目についたものを籠に入れた。ざっと、3000円。財布には一万円札が有るはず。昨日ATMで引き出した。
そのままレジへ行って、籠を店員に預ける。ピッピと商品がスキャンされるのを横目に、俺は一万円札を取り出すつもりで、財布を開いた。ところが、お札が全く無かった。俺は一瞬で、疑問と焦りで頭がいっぱいになった。その内にスキャンが終わり、「2888円です」と店員。
俺はとりあえず、「すいません。ATMってありますか?」と尋ねる。「お店を出て左手の駐輪場の駐輪場の前に有ります。お戻りになったらサービスカウンターにてお支払いをお願いします」と店員。
俺は、店を出て駐輪場へ歩いた。歩きつつ、昨日一万円札を引き出したシーンから今に至るまでにお金を使った場面はないかと、記憶を辿ってみた。
コンビニで芋焼酎を買った時、一万円札は有った。200円の芋焼酎を買うのに一万円札で支払いたくないと思いつつ、小銭が有ったことでほっとしたのも覚えている。
その後、丘頂上の公園で切れ長目つきの女としゃべった。そこまで思い至った時、はっとした。あの切れ長目つきの女、何度か俺にボディタッチして来た。すりだったのでは?それから、切れ長目つきの女と話して以降から今に至るまでの記憶を辿っても、やはり一万円札を用いた記憶はない。やはりあのボディタッチの時にすられたか?そう思ったものの、確証はない。有るはずの一万円札が無いという大損な気持ちだけが残った。
それにしても。もしも切れ長目つきの女がすりだとしたら、先程の作業員の話し、狐が財布を奪ったという話しも連想されてしまう。すりが多発しているのか?思わず苦笑してしまう。だが、奇妙なことを閃いて苦笑も自然と収まる。これは妙な偶然なのだろうか?切れ長目つきの女が狐さんの化けた姿であったならどうだ?思えば、美女の方から声を駆けられるシチュエーションを都合が良すぎるとも感じたんだ。
そこまで考えて首を振った。ホラー小説の書きすぎだ。ATMを見つけた俺は、そちらへと速足に向かった。
以上「星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】」。
※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。
※本ブログの記事は全て著作権によって保護されておりますことへのご理解をお願い申し上げます。

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第一章:仕事帰りの小旅行|星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】
或る金曜日の仕事帰りのこと。俺(米津秀行・28歳)は、自宅アパートの建つ丘に巡らされた道たちの中で、アパート棟への階段道ではなくて、丘頂上の展望広場への土の道を歩いた。仕事帰りのちょっとした幻想旅行とでも呼ぼうか。またその旅行の中で、あの美女に会えるかもしれない期待もありつつ。
丘頂上へ向かうこの道は、自宅アパートへの道から分岐する。土の狭い道であり、丘の内で木々の茂るエリアに分け入るように伸びているため、左右には数えきれない程の木々が奥を見通せない程に思い思いに立っている。
そんな木々が、嵐の残していった生暖かい暴風で絶えずざわめいている。時折、突風のような強い風が吹くと、ザワザワ、ゴトンゴトンとまるで歓声のようだ。ボトッと木の実だろう落ちる音もする。
歩きつつ、空を見上げる。黒いシルエットとなっている木々の間から、紺色の夜空が、木々の動きに合わせて見え隠れする。満月もまたチラチラ覗ける。夜空は、金色に輝く月周囲から順に、紫~紺のグラデーションで、数限りない恒星たちが金粉のように散在している。灰色の千切れ雲は、暴風のためだろう、飛行機を目で追うようなスピードで流れている。
小道を歩いていると、木々は開けた。月の薄明りに照らされる平地、丘の頂上だ。俺は、高い空に包まれた。真上程の位置に月は浮かんでいて、その月から天球を辿るようにして正面へと視線をズラしていくと、地平線のさらにずっと先まで天球は広がる。天球のどこでも、星々は浮かんでいる。手前、地平線にも遠く及ばない小さな街が山に囲まれつつ、こじんまりと日常馴染みある灯りで輝いている。
宇宙の壮大さを感じることや宇宙の光を感じることは、人の作った文明社会にて生きる日常においてはあまり無い体験だ。目の前の風景は、日常から離れた気分にさせるものとも言える。これが、俺にとっての、心のプチ旅行の一つだ。
丘頂上は、整備されている公園エリアと、その外の整備されていないエリアとに、木の手すりによって区切られている。整備されていないエリアを見やると、草原が広がっていて、ところどころに木も立っており、生暖かい暴風によって、海の波ように靡いた。俺は、そちらへと、公園ベンチを通り過ぎて歩いて、木の手すりの前に立つ。
さて、プチ旅行のお伴の出番だ。コンビニで買った芋焼酎の炭酸割りの缶を鞄から取り出して、プシュッと言わせた。まずは一口目だ。生暖かい風の中で、冷えた炭酸は、喉に対して爽快な刺激をもたらした。アルコール度数7%。しばらくして、身体にはびりびりと違う刺激も走る。それから、手すりを焼酎缶置き場にして、草原や夜空やを眺めたりした。
その時、すぐ背後で足音が聞こえた。
第二章:或る美女|星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】
びっくりして振り返ると、例の美女だった。長身で切れ長の目つきをした美女であり、30歳前後だろう。俺は、想定外のこの事態に、どんな言動を取るべきかわからずに、立ち尽くしてしまう。先週もその前の週の金曜日も、俺がこうして丘頂上の広場で一杯飲んでいると、いつの間にやら彼女が居る(まるで野生の獣が密かに様子を窺ってくるように)のだが、いつも遠目に見るくらいで、話したことは無い。
今、彼女は振り返った俺と目が合うと、ニコッと笑いかけてきた。俺はドキッとして、さらにどうするべきかもわからず、目を泳がせながら首で挨拶するのみだった。彼女は「金曜日によく会いますね」と言って来た。俺は「ええ」以外に応えられない。彼女は「いいですね。星空を見ながらお酒なんて」と言いつつ、手すりへ歩いて、手を置いて夜空を見上げる。
整理のつかない俺だが、星空を見上げる彼女の横顔を見ていると閃いた。そうだ、高校時代に憧れていた先輩に似た系統の顔つきだ。
彼女は見上げていた顔を俺に向ける。俺は、ドギマギしつつ、目をそらしてしまった。彼女は「焼酎をお好きなんですか?」と続ける。俺が彼女の顔を見直すと、彼女の目線は手すりに置いてある缶へと移っていた。「私は芋焼酎を得意ではないですけどね」と続ける。俺は「でも、この焼酎は臭みは抑えられているんですよ。マスカットのような香りで、飲みやすいですよ」と、売り場に書いてあったことを述べた。彼女は「へー。今度私も挑戦してみようかな」なんて言う。
それから、いつの間にか俺のドギマギは薄れて、気づくと意味のないことを話していた。話していると、彼女は俺に何度かボディタッチもしてきた。そのたびに思わずドキッとして、心地の良い息苦しさも沸いた。
話しのきりの良いところで、彼女はニコッと切れ長の目と口元を崩して「それじゃあね」と言って、行ってしまった。俺は遠のく彼女の背中を、見送っていた。
年上美女や人妻に憧れるものの、今のところそのような女性とは付き合ったことは無い。今、そんな女性と二人っきりで話しをしたにも関わらず、ナンパ一つできなかったことを後悔してしまう。これからも憧れを果たせずに過ごすんだろうな。彼女は公園出入口の小道へと足を踏み入れて、姿は見えなくなった。
それから俺は、芋焼酎缶を飲み干して、アパートへと帰宅した。
第三章:妙な看板|星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】
翌日。俺は小説家を目指してもいるのだが、六時間程小説を書いた。理科学が原子分子を発見したことによって従来だと幽霊の仕業と思われていた現象の一つを解決するが、一方で原子分子自体が新たな謎ともなり、そんな謎に幽霊だの怪奇だのを見出すために、人と幽霊の関係はいつまで経っても切れないなんて内容だ。
小説を書いたり家事をしたりしている内に、いつの間にか夕方になっていた。俺は夕食の材料を調達するため、昨日のコンビニかその近くのスーパーへと玄関を出た。
丘斜面の階段を降りていると、丘頂上への小道との合流点が見えて来た。そこに作業服を着た人が数人、作業をしているのが見える。抱えていた看板を置く者やらその看板を倒れないよう立っている木の幹に針金を巻き付けて固定する者やら指示を出す者。
俺は歩きながら、看板の文字を目で追った。「狐に注意」とある。
俺は一人の作業員の隣で立ち止まり、「狐の目撃でもありましたか?」と尋ねる。
その作業員は応える、「丘頂上に公園があるだろ?そこのベンチに座ってスマホをいじっていた男が忍び寄って来た狐にポケットの財布をひっぱり出されたって。男が気づいた時には、もう狐は財布を咥えて逃げて行ったけれど、男は追いつけないまでも逃げた方に歩いていくと、道路に財布は落ちていたんだって。カード等いろいろと無事だったけど、おさつは抜き取られていたそう」と。俺は頷きながら聞いていたが作業員は付け加えて、「狐さんがお金を使うのかね?」と笑った。
俺が「この丘には野生動物も多いみたいですけど、人に近づくなんて珍しいですね」と言うと、作業員は「確かにな。野生動物と人間の距離が近くなったとしたら、良くないね」と。
それから俺は、キリのよいところで話しを切り上げて、買い物へと階段を降りた。
第四章:財布の中身|星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】
スーパーでの買い物。店内を、いつも通り入口からコの字に回る。野菜のコーナーではピーマンが目に付いたが、まだアパートに残っている。魚コーナーで戻りガツオの刺身、肉のコーナーでウインナー、それからお酒のコーナーでは現在芋焼酎コーナーを片っ端から制覇しようとしているため前回の隣のもの、惣菜コーナーでは大根や胡瓜の糠漬け、その横のパンコーナーで甘栗デニッシュ、その近くに特設で置いて有ったご当地もののカップラーメンなどなど、目についたものを籠に入れた。ざっと、3000円。財布には一万円札が有るはず。昨日ATMで引き出した。
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俺は、店を出て駐輪場へ歩いた。歩きつつ、昨日一万円札を引き出したシーンから今に至るまでにお金を使った場面はないかと、記憶を辿ってみた。
コンビニで芋焼酎を買った時、一万円札は有った。200円の芋焼酎を買うのに一万円札で支払いたくないと思いつつ、小銭が有ったことでほっとしたのも覚えている。
その後、丘頂上の公園で切れ長目つきの女としゃべった。そこまで思い至った時、はっとした。あの切れ長目つきの女、何度か俺にボディタッチして来た。すりだったのでは?それから、切れ長目つきの女と話して以降から今に至るまでの記憶を辿っても、やはり一万円札を用いた記憶はない。やはりあのボディタッチの時にすられたか?そう思ったものの、確証はない。有るはずの一万円札が無いという大損な気持ちだけが残った。
それにしても。もしも切れ長目つきの女がすりだとしたら、先程の作業員の話し、狐が財布を奪ったという話しも連想されてしまう。すりが多発しているのか?思わず苦笑してしまう。だが、奇妙なことを閃いて苦笑も自然と収まる。これは妙な偶然なのだろうか?切れ長目つきの女が狐さんの化けた姿であったならどうだ?思えば、美女の方から声を駆けられるシチュエーションを都合が良すぎるとも感じたんだ。
そこまで考えて首を振った。ホラー小説の書きすぎだ。ATMを見つけた俺は、そちらへと速足に向かった。
以上「星降る丘にて或る夏の深夜【怪談】」。
※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。
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例えば、近所のスーパーやコンビニで見かけない食。デパ地下スイーツ・有名な料理店の真空パック・ご当地ラーメンなどなど↓↓↓
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その他にも、近隣のお店に欲しいものが無い時、気分転換をしたい時、フラリとのぞいてみては?↓↓↓
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