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7-4ナンパ-昨日の学祭|自分の記憶を考察する【怪談・短編】

(他ページは7-17-27-37-47-57-67-7)



彼女から遅れること数秒後、丁度ガチャンと閉まる音のした、ドアの前に立った。ドア越しには、部屋の中から物音はしない。ハイヒールの音はもう止んでいる。

開けてみる?でも、特定のサークルが借りている部屋だったら?更衣室だったら?不安になりつつも、張り紙もせず集会したり着替える方がいけないから、すいませんとでも言って閉めればよいだろう。

俺は、ゆっくりとドアを開けた。ドアのきしむ音が、部屋の中に反響する。

そこは広い部屋だった。何列もの長椅子や長机が舞台に正対している(俺に側面を向けている)。彼女は、長椅子や長机の間でこちらに背を向けて、じっと立っていた。彼女と俺以外、誰もいない。広い部屋は、俺の息すら反響する程に静まり返っている。



ドアの外に立って恐る恐る中を覗いていた俺だが、一歩踏み出して半身を部屋に入れて、ドアを支える(このドアは手を離すと閉まる設計)。さて、何と話しかけよう?相変わらず、彼女はじっとしている。そうだ。道に迷ったふりをして彼女に声をかけよう。そう言えばさっき、学祭メイン広場で水色なんとかというサークル名を見かけた。

俺は彼女に、「あの~、こちら水色何とかってサークルの部屋でしょうか?」と尋ねた。俺の声は反響して、大教室中を飛び交う。だが、彼女は返事をせず、こちらに背を向けたまま、じっとしている。

俺は不審に思いつつ、身体を部屋に入れてドアを手放し、彼女へ向かって歩く。歩いていると、後ろからゆっくり重たく「ガチャン」とドアの閉まる音が音がして、大教室に反響する。「あの~」と言いながら、なおも、俺は彼女に近づいた。それでも、彼女は微動だにしない。

俺はもう、彼女のすぐ後ろまで来た。もしかして、俺をからかっているのか?「何で黙っているんですか?」と言いつつ、彼女の正面へと躍り出て、彼女の顔を覗き込んだ。

俺はことばを失った…。それは、まぎれもなく、マネキンだった。


7-5逃げろ-昨日の学祭|自分の記憶を考察する【怪談・短編】



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