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或る金持ち客【怖い話・短編】

(本話の分量は、文庫本換算0.8P程です。)



大学生のEさんは、居酒屋でアルバイトをしている。担当は接客。

或る平日の夕方。ピンポーンとセンサーが鳴る。客が入って来たようだ。

Eさんが対応に。そこには、襟シャツとスラックスの上下にぼさぼさ頭の中年男がいて、出て来たEさんに目も合わせずブツブツと独り言を言っている。良い印象を与える男ではない。

ブツブツを一瞬止めてEさんに言う、「カウンターね」と。







ブツブツつぶやく内容は意味の有ることなのか?|或る金持ち客【怖い話・短編】


それから、席に座っているその男に、Eさんがお冷とおしぼりを運ぶ。男はブツブツを一端止めて、刺身の盛り合わせと日本酒を注文する。

しばらくして、Eさんが日本酒を運んで配膳。まだブツブツ言っている。配膳中、ブツブツの内容が聞こえた、「3,3,2,7,8。かける、いやわる。一つが二つなるのは何でだ?二つが三つにならないで四つになったと想定する」なんて。

その後、刺身の盛り合わせを運ぶ。男はやはり、ブツブツを続けている。「10にゼロを一つ付けることと100にゼロを一つ付けること」等と言っていたように思う。

Eさんは、男がブツブツ言うのは奇妙だが問題行動を起こしそうにはないと思ったし、それよりも業務に忙しくなっていって、気にしなくなった。







ブツブツ言う内容に成功の秘訣?|或る金持ち客【怖い話・短編】


中年男は、閉店時間まで居座った。会計は、3万円程。

閉店後、控室で先輩に「ブツブツ言う変なお客さんでしたね」と言う。先輩はEさんに、男について知っていることを説明する、「あの人。週一くらいで平日夕方に来るよ。いつも3万円くらいは注文する。この前、ブツブツ言う内容を聞いたんだけどね、『わたくしに2億円をもたらせた数字と出会ったのは、2億円をもたらせた日とすべきではなくて』なんてよ。金持ちなんだろうね」と。

それを聞いたEさん。ブツブツ言う数字を聞いて、宝くじを買ってみようかとも思ったのだった。


以上「或る金持ち客【怖い話・短編】」。



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