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7-3追跡-昨日の学祭|自分の記憶を考察する【怪談・短編】

(他ページは7-17-27-37-47-57-67-7)



人でごった返す学祭中のキャンパスを、右に左にと避けつつ、俺は彼女を追った。すれ違う者たちは、思い思いの楽しみに興じていて、ナンパをしようとする俺のことも、俺に声をかけられようとしている彼女のことも、知らないようだ。その内に、キャンパスの端の方にまで来た。この辺までくると、人も疎らだ。彼女は、喫煙スペースを横切って、キャンパスの端でひっそりと佇む小さな棟に入っていった。

俺も、彼女に続いて校舎へと入った。校舎内は、彼女の固いハイヒール音が反響していた。10m程先、ドアの並ぶ廊下を、彼女はなおも前進していた。彼女以外に、見える範囲に人はいない。この棟は、学祭と縁遠いと感じる。楽し気に盛り上がる学祭の音楽は、関係の無いことのように、壁や窓越しに遠く聞こえていた。

このような人目の少ない場所でのナンパは、俺としては周囲の目が無いのでやり易いが、彼女にとっては知らない男と二人っきりで怖いかもしれない。

そう思いつつ歩いていると、彼女は一つのドアへと歩み、ノブに手をかけて流れるように入っていった。その時、彼女の横顔は長い髪で見えず、ノブに添えられた手は、白い手袋をしていた。ハイヒールの音は部屋の中で続く。この廊下に居ては、遮られた音のように伝わってくる。


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