冬のひととき【怪談】
この話は、雪国旅行での深夜に遭った、嬉しいようなでもちょっと不気味な話です。
(分量は文庫本換算2P程です。他の話は「本blog全記事の一覧」へ。)
冬の雪国への一人旅。
雪のシンシン降る夜。
木造の、古くて広くて、天井の高い部屋。
静かだ。
囲炉裏のパチパチという音、鍋のシュワシュワ沸騰する音。時々、外から、屋根か木の枝か、積もった雪が落ちる「ドサッ」という音。
俺は、湯気の立っている芋焼酎のお湯割りを、口に入れた。
アルコール度数は、高めの10~15%。身体の深くに、熱とアルコールの刺激が巡った。
木製のお玉杓子のようなものを、手に取る。シュワシュワと言う鍋から、白菜とタラと鶏肉を小皿へと取り分けた。
口に入れると、熱とともに白菜のシャキシャキ、鶏の甘味、タラの風味、などなど旨い。
さて、料理とともに、怪談本でも読むか?怖い話のTVでも見るか?
気ままな一人旅行の、気ままなひと時だ。
だがその時。
部屋玄関をノックする音とあいさつの声。
女性従業員のよう。
あいさつに応えて、玄関に出てみる。
そこに、女性が、900mlのお酒の瓶ボトルを抱えて、立っている。
切れ長の目をした長身美人で、30歳前後だろう。服装は、従業員統一の着物姿。
彼女は、手に持っているお酒について説明をはじめた。
それは、地元特産の高級芋焼酎で、現在宿泊している客の中から、抽選でプレゼントをするキャンペーン中だそう。
そして、俺が当選したと言う。
お礼を言いつつ、彼女からお酒を受け取った。ただ、美人であることこそ気になってしまった。
気ままな一人旅行だ。ナンパのようなことでもしてみようか?
雪降る静かな夜、旅先、そして美女。ロマン有るシチュエーションではある。
なんて思ってもみるけど、悩んでいると、すぐに時間は過ぎる。
彼女は、〆の形式的な挨拶をして、おじぎをした。
まあナンパなんて成功しないだろうと、諦めかける。
だが、頭を上げた彼女は、切れ長の目と口元を崩して俺にほほ笑んだ。
そのほほ笑みに、俺は形式的ではない意味を感じたようにも思った。
少し期待もしたけど、そんなことは無いよなと、結局ナンパはしない。
彼女は、そのままクルリと背を向けて去った。
俺はただ、彼女の後姿を見送っていただ。
それからまた、部屋の奥へ。
立っているついでに、窓の外を見る。
夜の入り辺りから降り出した大粒の雪は、ひらひらうじゃうじゃ舞っている。真っ直ぐに降っているので、風なら弱そうだ。
白い雪は、暗い夜空を背景に、俺の居る部屋の灯りを反射していて映える。
それでも、音はシンと静かで、幻想的にも思える。
雪がたくさん降ったり積もったりする地に、普段は暮らしていない。
窓の外の風景は、旅に来たと実感させる。
自然と、旅行一日目の今日を振り返ってしまう。
昼。
木造の古い建物の並ぶ観光地を歩いた。江戸時代を思わせる街並みだった。
雪は降っていなかったものの、昨日降った雪がうっすらと積もっていた。
藍色の瓦屋根に白い雪というのも、風情あった。
そう言えば、そんな街の中で、迷子で困っている一人の子を見つけた。
それで、道案内してあげた。
切れ長の目で、きつね色の肌をしたのが特徴的な子だった。
見知らぬ小さい子を連れると誘拐を疑われそうなので、警察へ連絡するのが筋だろう。
でも、その子の方から「街は解りにくいので、街外れまで連れて行って欲しい」とグイグイ言ってきたのだ。
街の外れくらいまで連れると、ここからは分かると言うので、その子と分かれた。
その時、もう夕方だった。
俺は、そのまま、山の麓に在るこの旅館に歩いて来た。
夕食を食べ終えると、電話で従業員を呼んだ。
夕食を下げに来た従業員は、先程プレゼントの芋焼酎を持ってきた従業員さんではない。
ただ、俺は芋焼酎のお礼は言っておいた。
でも、その従業員さんは言ったい「そんなキャンペーンはやっていませんよ」と。
その従業員さんは、電話で、上役にキャンペーンについて確かめてもくれた。やはり、そんなキャンペーンはやっていないとのこと。
俺は、狐につままれたような思いだった。
従業員は、警備等をしっかりしておくと言ってくれた上で、部屋を後に。
芋焼酎は…。
従業員の忠告は聞かずに、いただくことにした。
多少は不気味だけど、今後俺の身に害も無いならお得だし、旅行先での良い思い出だ。
従業員を見送ったために立っていた俺は、何となく窓へ歩いて、外を眺めた。
見るのと同時に、さっと背を向けて歩いて去って行く、二匹の茶色い動物が見えた。
あれは、狐かな?大人の狐と子狐と。
以上「冬のひととき【怪談】」。
※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。
※本ブログの記事は全て著作権によって保護されておりますことへのご理解をお願い申し上げます。

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(分量は文庫本換算2P程です。他の話は「本blog全記事の一覧」へ。)
第一章:雪国旅行のひと時|冬のひととき【怪談】
冬の雪国への一人旅。
雪のシンシン降る夜。
木造の、古くて広くて、天井の高い部屋。
静かだ。
囲炉裏のパチパチという音、鍋のシュワシュワ沸騰する音。時々、外から、屋根か木の枝か、積もった雪が落ちる「ドサッ」という音。
俺は、湯気の立っている芋焼酎のお湯割りを、口に入れた。
アルコール度数は、高めの10~15%。身体の深くに、熱とアルコールの刺激が巡った。
木製のお玉杓子のようなものを、手に取る。シュワシュワと言う鍋から、白菜とタラと鶏肉を小皿へと取り分けた。
口に入れると、熱とともに白菜のシャキシャキ、鶏の甘味、タラの風味、などなど旨い。
さて、料理とともに、怪談本でも読むか?怖い話のTVでも見るか?
気ままな一人旅行の、気ままなひと時だ。
だがその時。
部屋玄関をノックする音とあいさつの声。
女性従業員のよう。
第二章:ナンパも有り?美人従業員|冬のひととき【怪談】
あいさつに応えて、玄関に出てみる。
そこに、女性が、900mlのお酒の瓶ボトルを抱えて、立っている。
切れ長の目をした長身美人で、30歳前後だろう。服装は、従業員統一の着物姿。
彼女は、手に持っているお酒について説明をはじめた。
それは、地元特産の高級芋焼酎で、現在宿泊している客の中から、抽選でプレゼントをするキャンペーン中だそう。
そして、俺が当選したと言う。
お礼を言いつつ、彼女からお酒を受け取った。ただ、美人であることこそ気になってしまった。
気ままな一人旅行だ。ナンパのようなことでもしてみようか?
雪降る静かな夜、旅先、そして美女。ロマン有るシチュエーションではある。
なんて思ってもみるけど、悩んでいると、すぐに時間は過ぎる。
彼女は、〆の形式的な挨拶をして、おじぎをした。
まあナンパなんて成功しないだろうと、諦めかける。
だが、頭を上げた彼女は、切れ長の目と口元を崩して俺にほほ笑んだ。
そのほほ笑みに、俺は形式的ではない意味を感じたようにも思った。
少し期待もしたけど、そんなことは無いよなと、結局ナンパはしない。
彼女は、そのままクルリと背を向けて去った。
俺はただ、彼女の後姿を見送っていただ。
第三章:思うに怪奇?今日一日と美人従業員|冬のひととき【怪談】
それからまた、部屋の奥へ。
立っているついでに、窓の外を見る。
夜の入り辺りから降り出した大粒の雪は、ひらひらうじゃうじゃ舞っている。真っ直ぐに降っているので、風なら弱そうだ。
白い雪は、暗い夜空を背景に、俺の居る部屋の灯りを反射していて映える。
それでも、音はシンと静かで、幻想的にも思える。
雪がたくさん降ったり積もったりする地に、普段は暮らしていない。
窓の外の風景は、旅に来たと実感させる。
自然と、旅行一日目の今日を振り返ってしまう。
昼。
木造の古い建物の並ぶ観光地を歩いた。江戸時代を思わせる街並みだった。
雪は降っていなかったものの、昨日降った雪がうっすらと積もっていた。
藍色の瓦屋根に白い雪というのも、風情あった。
そう言えば、そんな街の中で、迷子で困っている一人の子を見つけた。
それで、道案内してあげた。
切れ長の目で、きつね色の肌をしたのが特徴的な子だった。
見知らぬ小さい子を連れると誘拐を疑われそうなので、警察へ連絡するのが筋だろう。
でも、その子の方から「街は解りにくいので、街外れまで連れて行って欲しい」とグイグイ言ってきたのだ。
街の外れくらいまで連れると、ここからは分かると言うので、その子と分かれた。
その時、もう夕方だった。
俺は、そのまま、山の麓に在るこの旅館に歩いて来た。
第四章:正体は?|冬のひととき【怪談】
夕食を食べ終えると、電話で従業員を呼んだ。
夕食を下げに来た従業員は、先程プレゼントの芋焼酎を持ってきた従業員さんではない。
ただ、俺は芋焼酎のお礼は言っておいた。
でも、その従業員さんは言ったい「そんなキャンペーンはやっていませんよ」と。
その従業員さんは、電話で、上役にキャンペーンについて確かめてもくれた。やはり、そんなキャンペーンはやっていないとのこと。
俺は、狐につままれたような思いだった。
従業員は、警備等をしっかりしておくと言ってくれた上で、部屋を後に。
芋焼酎は…。
従業員の忠告は聞かずに、いただくことにした。
多少は不気味だけど、今後俺の身に害も無いならお得だし、旅行先での良い思い出だ。
従業員を見送ったために立っていた俺は、何となく窓へ歩いて、外を眺めた。
見るのと同時に、さっと背を向けて歩いて去って行く、二匹の茶色い動物が見えた。
あれは、狐かな?大人の狐と子狐と。
以上「冬のひととき【怪談】」。
※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。
※本ブログの記事は全て著作権によって保護されておりますことへのご理解をお願い申し上げます。

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楽天市場には珍しいものから日用品まで充実。
例えば、近所のスーパーやコンビニで見かけない食。デパ地下スイーツ・有名な料理店の真空パック・ご当地ラーメンなどなど↓↓↓
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その他にも、近隣のお店に欲しいものが無い時、気分転換をしたい時、フラリとのぞいてみては?↓↓↓
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