この話は、「
追跡劇!深夜の博物館【怪奇話】」の続きです。
幼い小岡が、或る山奥で地下階段を見つけて、その階段の途中で怪奇の光景に包まれた話(コズミックホラー)です。
(分量は、文庫本換算5ページ程です。他の話は「
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第一章:歴史調査の原点?祖父とのキャンプ|地下階段?或る山奥のキャンプにて【怪奇話】
小岡さん(55歳・隠遁生活者)は、「立ち話しも長くなりそうだ」と言って、俺(稲岡良仁・29歳・多摩文理大学考古学研究科講師)を、玄関から部屋へと上げた。
小岡さんがお茶を用意したり、俺は席に着いて待っていたり、やがて、小岡さんと俺はテーブルを挟んで向き合って一息ついた。
そして、小岡さんは、本題をしゃべりだした。
「そうか。祖父の見つけた化石は、盗まれたんだな(「
追跡劇!深夜の博物館【コズミックホラー小説】」。
「はい。
国領教授の姿をしていた者が、深夜の博物館から持ち去ったと見られます。
ただ、国領教授の姿をしていただけで、本物の国領教授ではなかったと、俺は思っています」、俺は答えた。
小岡さんはしばらく黙る。うつむいたり顔を上げたりするが、表情は感慨深そうだ。
それからまた、しゃべりだした、
「この山奥には、何者か潜んでいる。
今回私が発見した化石や昔祖父が発見した化石が、物語っている。
また、化石以外にも、私が幼い時に体験したことからも言える。祖父とのキャンプでのことだ。
その時の体験を、聞いてもらいたい」。
小岡さんはそう言って、いったんお茶をすすってワンテンポ置いた。俺は黙って続きを待った。
第二章:山奥で見つけた古い建物|地下階段?或る山奥のキャンプにて【怪奇話】
小岡さんは、幼い時のキャンプでの体験やその体験の考察をしゃべり出した、
「私は幼い時に、祖父とよく多摩地方の山へとキャンプに行っていた。
祖父のキャンプには、父も母も祖母もみんな嫌がって来なかった。
私だけ祖父のキャンプに連れまわされたが、私自身嫌ではなかった。
祖父はその時、多摩文理大学の教授であったが、定年は迫っていた。
私は幼心で、祖父は何かに焦っていたように思うし、一方で諦めによるのか寛大さもあったと思う。
何度も多摩地方の山でキャンプをした中で、私は一度、怪奇的な光景を目にした。
その日の夕方、私は火を起こすために、枝を探してキャンプ地周辺を歩いていた。
ちょっとした好奇心から、キャンプ場エリアを外れて、深い山奥へ足を踏み入れた。
山をなめてはいけない。コースを外れると、すぐに迷う。私は、キャンプテントの位置も元来た道も、わからなくなった。
ただただ彷徨った。人の手の入っていない山はどこまでも歩きにくく、右も左も同じに見える。
どこをどう歩いたかは覚えていないが、ふと開けたところに出た。
高い木々は生えていない、半径10m程の草地だ。その草地の半分くらいを、池のような水たまりのようなものが占めていた。
漠然とだけど、人の手の加わった地帯に見えた。
その草地に足を踏み入れ、縦断した。すると、草地の端を示すような高い木々に隠れて、木造の建物も見つけた。
私はその建物の前に立った。
漠然とだけど古い建物だと思った。
ちなみにだが、その時の記憶を、現在の知識や経験から考察すると、建物の年代について、少し詳細に知れる。
建物は、もともとは非常に古い時代に造られたものの、新しい時代に補習する等して手を加えて、現代に至っているということだ。例えば、石の土台の作られた年代と木の柱の作られた年代とはズレている。石の年代の方が古い。まあ、私の記憶が正しければの話しだけれど。
それから、私は建物の中に入った。
5m四方くらいの一部屋で、木の床、木の柱、土の壁。それ以外に何もない。
木々に隠れる位置に有る建物だし、灯りも無いので、薄暗い部屋だ。
埃っぽかった記憶は無いので、誰か掃除をしていたのだろう。
よく見ると、薄暗い部屋の端に、地下へ向かう階段を見つけた。
第三章:地下階段の途中で|地下階段?或る山奥のキャンプにて【怪奇話】
近づいて、その階段の先を見通した。
大人二人分くらいの幅の階段が、地下深くへずっと続いていて、或る程度より先は真っ暗で見通せない。
だけど、不思議な事に、途中一か所、ぼんやりと明るい。
私は、その光を目指して、手探りで階段を降りた。
そのぼんやりとした光にたどり着いた時の光景を、今も忘れられない。
そこは、2m四方くらいのガラス張りだった。
ガラスの向こうは、上下左右奥行き、水で満たされていて、まるで水族館のようだった。
おそらく、建物に隣接していた池或いは水たまりを、地下からガラス越しに覗いているのだろう。
太陽の光が池或いは水たまりから入ってこのガラスを抜けるために、階段の一か所は、ぼんやりと明るいのだろう。
ガラスを通して水中を見ていると、見通せない奥の方から、徐々に大きな影は迫って来た。
やがて大きな亀だとわかった。2mはあったように思う。大迫力だったなあ。
しばらくは亀の様子を見ていたが、この後どうしようかと悩んだ。
階段はまだまだ下へと続いているが、全く先を見通せない黒い穴のようだった。
でも、この先に誰かいるのなら、キャンプ場への道を教えてくれるかもしれない。
その時だ。
背後つまり階段の上の方から、うめき声のようなものが聞こえた。
びっくりして振り返った。
それと同時に、口や鼻をふさがれた。
そのまま、気を失った。
それから、祖父に揺り起こされて気が付いた。
そこは、キャンプ場付近の道路脇だった。
以上のことを、父にも母にも祖母にも話したが、「おそらく夢」だの「山は危ない」だの「キャンプもほどほどに」だのと言われた。
祖父だけは「お前の見たものは本当のことだ」と言い、微笑んだ。
大人になってからも、私は幼い記憶を振り返って、考察した。その時々の自分の知識や経験等を基にしたり、自治体や企業の公表するデータ等を調査したり。
その中で、地下階段の途中で見たガラスのことも考察した。それと祖父の発見した化石を合わせて考察した。そして、断定はできないものの、怪奇的な結論に至った。
さて、階段の途中で見たガラスのこと。
ガラスの向こうは、おそらく池の中だ。
となると、ガラスやその周囲の土壁は、池の水圧に耐えうるものとなる。
どんな技術だろう?ガラスは、強化ガラスかな?土壁の中には、もしかすると、金属やコンクリートで強度を増しているのかもしれない。
仮にその通りだとして、誰が建設した?
周辺の自治体やら企業の記録を調べたが、そんなものを建設した者はいない。
また、木造の建物に地下階段を建設したり、階段の途中の壁をガラスにして池を見通すなんて建設物の例は、日本国全体で見ても珍しいだろう。
また、祖父の発見した化石についてだ。どうやら、盗まれたようだけれど。
多摩地方の或る山奥で、モグラのような手を持つものの、全体としては人類のような腕と手の化石だった。
人類であるなら高知能を有している可能性も有り、何ら文明を築く可能性も有る。また、モグラのような腕と地下への階段というのも想像させるものだ。
つまり、私が幼い時に見た建築物は、日本国の文明とは違う、或いは、人類の文明とは違う、何ら未知の文明の中で作られたものではないか?
まあ、まだまだ何も実証していない。こじつけや連想に過ぎない。
第四章:怪奇的な研究の幕開け|地下階段?或る山奥のキャンプにて【怪奇話】
その後祖父は、道半ばで定年を迎えた。
奇妙な研究をする祖父に、他の研究機関等からのオファーは無かった。
私は、感情的には祖父の研究を受け継ぐべく大学進学をしても良かった。ただ、現実的にはハイリスクでもあった。祖父の学者人生を振り返っても、ほとんど進展していない。
若い私は、何も得られないかもしれない研究に身をささげることはできなかった。
結局、銀行に就職をして、空いた時間にモグラのような腕をした人類の研究を行った。
そして、この前のこと。
祖父が発見した化石と似たような化石を発見したのだ(「
奇妙な化石?或る山奥【コズミックホラー小説】」のこと)。
でも、その化石は、この小屋から盗まれた。
さらに、稲岡君の話しによると、祖父の発見した多摩文理大学所蔵の化石も、盗まれたようだ。
また私は幼いあの日以来、地下への階段を見ていない。
以上を合わせて考察すると、あらゆる痕跡は、意図的に消されているように思う」、
そう言って、小岡さんはお茶をすすった。
俺は、何と言っていいのかわからなかった。俺の知識や経験で助けられるものは、何も無い。
「できることがあれば協力をする」とだけ言った。
それから適当に挨拶をして、小岡さんの家を出た。
玄関ドアの前に立ちながら、改めて思った。隠遁生活者なんてバカにしていたものの、小岡さんは執念を持ちつつ、謎の生物を追っていたんだな。
そう思って、この前、小道で謎の生物に遭遇したことについてはっとした。
仮に、小岡さんの言う生物と俺の見た生物と、同種だとする。望んでも会えずにいる、小岡さん。向こうから姿を見せてくれた、俺。
この差に、何か明確な原因でも、有るのだろうか?
以上「地下階段?或る山奥のキャンプにて【怪奇話】」。
※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。
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テーマ : 怪談/ホラー
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