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深夜の一人居酒屋【ロマン怪奇小説】

休日前の夜、「当てもなく」一人で居酒屋に入る方もいるでしょう。

何を飲み食いしたいわけでもない。仕事から解放された気分のままに、ふら~っと店に入る。そんな「当ての無さ」も、楽しみの一つです。

でも、「当ての無さ」に身を任せ過ぎると、いつの間にか日常から遠く遠く離れてしまって、帰り道すら分からなくなってまうことも、有るかもしれませんよ。

この話は、悩める或る男が、仕事帰りの一人居酒屋をきっかけに、不可解現象に巻き込た話です。


(分量は、文庫本換算13ページ程。次の目次をタップ・クリックでジャンプできるので、しおりの代わりにどうぞ。他の怪談怖い話は「本blog全記事の一覧」へ。)




第一章:悶々とする恋愛感情|深夜の一人居酒屋【ロマン怪奇小説】


或る夏の夕方。

多摩地方の一大都市から数駅離れた住宅街に有る、高架の駅ホームにて、俺(米津秀行・27歳・一応プロ家庭教師)は、次の仕事のため、電車を待っていた。

暑さ、じめじめ、セミのジリジリ鳴き声。夏の様相だ。

とは言え、日差しももうオレンジに柔らかい。昼間に比べると涼しいので、ちょっとは有り難い。

一方で、俺の悶々とした気持ちは、一つ前の仕事のせいで、ヒートアップしていた。



俺は、小説家を目指しつつ、多摩地方で家庭教師として働いていた。


各家庭には、「学生バイトとは違う」等と信頼の高まることも多かった。親御さんから、教育相談を受ける等、距離の近づくことも。



今、仕事を終えたのは、そんな家庭の一つ。

その家庭の、10歳くらい歳上の人妻さんに、俺は恋愛感情のようなものを持ってしまっていた。



もちろん、職業倫理は守る。不倫に発展して訴訟でも起こされたら、払える賠償金も持っていない。

そもそも、その人妻さんは、俺に対して、仕事を逸脱する言動を見せない。特には恋愛感情なんて抱いていないのだろう。

俺の本心は、せっかくの出会いを棒に振るのはもったいない気も。俺から気持ちを伝えずにいられないような。全体としては、俺一人、悶々としているようだ。



やがて、電車が到着、ドアが開く。俺は、ドア前に、邪魔にならないようにしつつ立つ。

次の仕事は、5駅隣だ。



ドア前が閉まって、発車する。

俺は、ぼんやりと、外を眺めた。

高架であって、多摩地方の平地を、地平線へと遠く見通せる。住宅街やスーパーが広がっている。もともとは農村だったのだろう、住宅の合間には、とびとびに広い畑も点在。

それらは、オレンジの日で、穏やかに染まっている。



飛び飛びに、丘も有る。大きな丘も、ちょっとした丘もさまざま。

中には、マンションがいくつも建っている丘も。

例の人妻さんも、あんな所に有るマンションに住んでいる。否応なく思い出してしまう。



思い出さないようにと、違うところに目を移す。

緑の茂丘が目に入る。木々の少ない草原エリアを、黄色っぽい獣が一匹で歩いていた。

あれは、まさか狐?数百メートルは離れているため、はっきりとは言えない。

丘には畑や数件の住宅も有るが、獣の周囲に、人はいない。

目で追っていると、獣は立ち止まって、顔を上げた。その瞬間、目が合った気がした。

まあ、遠くなので実際の目線は解らない。


第二章:一人居酒屋|深夜の一人居酒屋【ロマン怪奇小説】


その後、住宅街まっただ中の駅で降りて、浪人生の家庭へ。

そして、180分授業。


22時を回ったくらいに、終えた。この授業で、今日の俺の仕事は終わりだ。


駅へ向かいつつ、夏の今、暑さと仕事の疲れは、冷えた炭酸系のお酒を連想させずには、いられない。


今日は、金曜日。居酒屋等で飲んで帰宅しよう。



それから、俺は、自宅アパートへの途中駅、多摩の一大繁華街の駅に降りた。

何を食べたいというのはない。いつまで飲むという計画もない。要するに、当てのない一人飲み。


あちこち店を回るものの、金曜日の夕方だ。駅周辺のビルやらデパート内に、一人客の入れる余地は無い。


23時を過ぎた辺り。

歩き回った末に、駅から大夫離れた古い小ビル2Fに、席の空いている居酒屋を見つけた。入口のメニュー看板を見ると、焼き鳥や焼き魚等、焼く物の多い普通の居酒屋だ。

ここにしよう。



入ると、窓際席に案内された。

暗めの店内で、各テーブルを点々と照らすような灯りの配置。多少お洒落でありつつ、多少怪しさも有る。

客は俺の他に、数組。店員は、かちゃかちゃと食器を運んだりテーブルを拭いたりしているので、さっきまで客はいたのだろう。

窓の外を眺めた。古い中小ビルが並んでいる、二車線程の通り。自宅を目指していると思われる人、駅へ向かって歩いていると思われる人、さまざま。

どちらにせよ、家路だろう。俺はこれから一人飲みだ。この居酒屋の位置は俺にとって、終電を逃しても歩いて帰れる場所。問題無い。


俺は、店員を呼んで、焼き鳥の盛り合わせ、ホッケの塩焼き、お腹が空いていたので、じゃがバター二皿を注文。飲み物は、まずはビールだ。



それから、スマホで野球の結果を見たり、考古学雑誌オンライン版を見たり、小説案を考えたり、そしてあの魅力的な人妻さんのことを思い出したり。

時間が過ぎるのは早かった。すぐに0時を回る。他のテーブルも、一組また一組と退店していて、客は俺のみ。


居酒屋メニューでは一向に、お腹はいっぱいにならない。ラーメン屋にでも行こうと、立ち上がろうとした。


その時だ。

店員の「いらっしゃいませ。お一人様で」という声が響く。

そして、きっちりとしたネイビースーツ姿の美女が、姿を現す。俺より少し年上っぽい。

おっと。

俺は、浮かせた腰を、落ち着けた。


店内には、俺と一人のみの年上美女だけだ。

まあ、特に何事も無いだろうけど、怪しさ有る店内で年上美女と二人だけ。その雰囲気を味わえるだけでも、お得だ。


第三章:危険な出会い|深夜の一人居酒屋【ロマン怪奇小説】


年上美女は、俺の斜め前方席へと案内された。



それから俺は、年上美女をチラ見しつつ、スマホをいじるふりをしていた。

スカートから伸びる締まった脚。危険な妄想は止まらない。



驚くことに、年上美女もまた俺を意識しているようだった。俺が年上美女の顔をチラ見すると、視線が合うことも多いのだ。

これは、何かを期待しても良いのか?俺は居座るために、店員を呼んで小皿と芋焼酎のソーダ割りを注文。



注文してから年上美女を見る。また目が合った。今度は、口元をにっこりほほ笑んできた。

俺はどう対応すれば良いのか解らず、ぎこちなく笑って軽く頭を下げた。



次に年上美女と目が合ったらどうすれば良い?

話しかけようか?

何の話しをする?

頭の整理が付くまで年上美女の方を見ないようにしたが、この手のことで、頭の整理は付くことはない。

一方で、年上美女がこちらを見ているという視線は、大いに感じた。プレッシャーにもなった。


しばらくして、店員が、年上美女のテーブルに料理を運んできた。

年上美女は、「窓際に移ってもいい?」と店員に聞く。

「どうぞ」という店員の声。


そして、年上美女は、俺の隣の席に。後に続く店員は、その席に料理を置いて、厨房に引っ込んだ。


店員が厨房に引っ込むと、年上美女は、俺に「どうも」と言ってくるので、俺はスマホをいじるふりを止めざるを得ず、顔を上げる。年上美女は、ほほ笑んで来た。俺は、「え?ああ…はい」なんて言いながら、頭を下げる。

彼女は、「このお店は、油揚げがおすすめよ」と続ける。

彼女のテーブルに、油揚げを炙っただけのもの、出汁醤油をかけたもの、ピザ風のもの、バター醬油のもの、などなど油揚げのフルコースだ。

俺がそれらを眺めていると、「食べていいよ。一人じゃ食べきれないから」と彼女。


まさか彼女の方から話しかけてくるとは。

整理の付いていない俺の頭は、余計にぐしゃぐしゃになった。とりあえず、「…この後、俺のテーブルに串焼きが来るんでどうぞ」とのみ、応える。

「じゃあさあ、そっちのテーブルに移るね」と言い、彼女は俺のテーブルに皿を移して乗り込んで来た。



その後、俺は年上美女と、一つテーブルでいろいろしゃべった。互いの仕事のことやら好きなお酒の銘柄等々。


楽しくなってきた。深い話しもできそうな雰囲気になってきた。酔った勢いだって有ったろう。俺は愚かにも、「魅力的な人妻さんに悶々としている」なんて言ってしまった。

年上美女は、不快な顔をせずに、笑いながら聞いてくれた。


そして、一通り聞いてくれた後に言ったのだ、「そんな君に、人妻さんを紹介してあげようか?」と。

「え?」以外に、俺は応えられなかった。

黙っている俺に、年上美女は続ける、

「友人にいるの。旦那に浮気されて、怒り心頭だったけど、許す代わりに、自分も一度浮気するって。

それでさあ、その彼女の好みって、君のような人なんだ。君をはじめて見た時からそう思ってたのよ」。

言われた俺は、期待もしてしまって、すぐに拒否をできなかった。それで、挨拶のように、「そんな。冗談言わないでくださいよ」とのみ言った。


年上美女は続ける、「まあいいでしょ。彼女とデートして、慰めてあげてよ」と。

仕事上果たせぬ恋心を抱えている俺。年上美女のことばに、人妻さんと遊べる期待は、湧き上がってきた。

当然ながら、同時に迷いも湧き上がる。浮気相手として訴えられたらどうする?

即答できずにいると、年上美女は「じゃあ決まりね」と言い、スマホを操作する。その女性に連絡しているのだろう。

まずい。俺の心は決まっていないのに。

俺は、「待ってくださいよ」と身を乗り出して、年上美女からスマホを取り上げようとする。年上美女は、俺の手をふざけながら払いのけたりして、取り合わない。

しばらくして、「じゃあ明日の夕方に○○団地ね」と言う。

いきなりの団地!?

その後。俺は当然、年上美女に断りを入れ続けた。年上美女は、「遊ぶチャンスは明日のみ」や「断ったら彼女(その人妻さん)は落ち込む」「彼女を立ち直らせて欲しい」なんて言うのだ。

結局は、「俺がその人妻さんと会って浮気はいけないと諭す」、で決着した。

仕事帰りの一人居酒屋のせいで、妙なことに巻き込まれてしまった。


第四章:山裾の団地にて怪奇|深夜の一人居酒屋【ロマン怪奇小説】


その夕方(日付は変わらず)。

俺は、居酒屋近くのバス停で、乗車した。後ろの方の席に着く。

俺は、これから浮気をするのだろうか?期待と不安とないまぜだ。だが、その人妻さんの暮らす団地は、市街地を抜けた住宅街をも抜けたその先の山裾に有る。到着までは、時間が有る。多少、余裕も有る。

バスは、信号に引っかかったり、駐停車中の車をかわしたり、停車と発進とを、不規則に繰り返していた。

その内に俺は、うたた寝をした。



それから、ふと気が付くと、バスはスムーズに走っている。

窓からの眺めは、街のごちゃごちゃでは無い。ビルも、住宅も、信号も、時々点在する程度の二車線道路だ。

俺は、首を前に向けて、運転席の大きな窓を見通した。山が迫っている。さらに、その山裾に、5棟程の集合団地が見える。

俺の眠気は、ふっとんだ。



バスのアナウンスが有って、俺は降車ボタンを押した。

バスは停車。ドアが開く。ついに、団地前のバス停に降り立った。

バスは、山をさらに奥へと、出発する。俺は、その背中を見送る。遠くのカーブを曲がって、見えなくなった。

時刻は、18時を回っている。オレンジ色の空では、紫色のちぎれぐも雲が流れている。

風が吹く。迫る山の木々はザワザワ言う。セミの声は、うるさいとも感じないくらいに当たり前に続く。時々、鳥の声も響いた。草の青臭い匂いは、夏の湿気や暑さに混じって鼻をつつく。

街から離れて、ずいぶんと遠くまで来た気分だ。


視線を、道路を挟んで反対に移す。

並ぶ銀杏の緑の葉の間から、団地の白い棟は見える。子どもの遊ぶ声も、時々響く。

これから厄介なことに巻き込まれるか否か、俺次第だろう。

浮気を思いとどまらせる文言は、考えて来た。旦那は、明日の朝~午後に帰ってくるとのこと。時間は、十分有る。


それにしてもだ。

土曜日の今日、いつもなら、一日中、小説を書いているだろうになあ。今日は、期待と不安に弄ばれつつ、さまざまシチュエーションを想定して、文言を考えていた。

ごちゃごちゃ思いつつ、団地へと歩いた。

ごちゃごちゃ思っていると、「団地妻の不倫物語」なんてエロDVDのタイトルのようなことも頭に浮かべて、ちょっと笑ってしまった。ダメだ、真剣になろう。


それからすぐに、年上美女から言われた部屋にたどり着いてしまった。



静かな金属扉が、俺の前に佇む。

この扉の向こうには、年上美女の言っていた人妻さんがいるのかと、改めて思う。期待と不安は、湧き上がる。


振り切るように、エイヤと、インターホンを押す。


すると、ドアホンには誰も出ずに、扉越しにチェーンと鍵を外す音が響く。


そして、ゆっくりと扉が開いた。



半開きの扉の向こうに、一人の女性。

長身で、俺の目の前に彼女の顔があった。全てを了解しているような態度でもある。

そして、静かでゆったりした口調で、「入って」と言う。


俺が玄関を入ると、彼女はゆっくりと玄関ドアを閉めた。

俺が靴を脱いでいると、彼女はスリッパを用意して、「上がって」と言う。

俺がスリッパを履くと、彼女は靴を整えてくれた。


それから、「お腹空いてない?」と、聞いてくる。

「いいえ。特には」と、俺は応える。

「もしかして食べて来た?」と彼女。

「いいえ」と答えると、「じゃあ、せっかく用意したんだから、食べて」と言って、俺の先に立って歩き出す。

付いて行くと、玄関を上がってすぐにキッチンが有るが、キッチン前のテーブルには、マグロの刺身やキュウリの糠漬け、炙った油揚げが用意されていた。

彼女は俺を座らせて、キッチンに行って、鍋に火を入れた。


団地デートを断ってさっさと帰ろうと思っていたけど、せっかく用意されたものを拒否するのも良くない。それに、彼女の、客への心遣いや堂々としつつもしなやかな姿に、魅力を感じてしまい、引き込まれてしまった。

食事ならいいだろう。

やがて彼女は、油揚げの味噌汁とごはんを運んで来て、俺の正面の椅子に座った。

俺はとりあえず、味噌汁をすすり、刺身に醤油をかけた。



彼女は、穏やかな表情で、俺を見ている。

裾にクセのある黒髪を、肩程に整えている。二の腕にはそれなりに肉はついて、玄関で見た時には、腰回りもそれなりにふっくらとしている。いたって普通の容姿の、30代半ば程女性。


「旦那さんは、明日帰ってくるんですよね?」、俺は尋ねた。

「そう。出張」

「俺はあなたの友人に、あなたに会うよう言われたんですけど、浮気は良くないのでは?俺にあなたを慰められとも思えないし」


彼女は、ふっと笑う。結局何も応えなかった。

次に何と言って説得しようかと考えて、しばらく黙っていた。

相変わらず、彼女は穏やかな笑顔で、俺を見てくる。



その時。彼女の携帯が鳴った。


彼女は、確認する。そして言った、「ごめんね。旦那が帰ってきたみたい。もう団地の敷地内にいるんだって」。

「え!?」俺は、飛び上がる程に驚いた。焦った。


「来て」と、彼女は立ち上がった。

彼女について行くと、隣の寝室だ。

彼女は押入引き戸を開けると、「入って」という。

俺は仕方なく、押入に上がる。

その間に、彼女は、キッチンに行って戻って来た。「念のためにね」と言って、冷えたペットボトルを俺に授けて、押入の引き戸を閉めた。

真っ暗になった。

すぐに、風の無さによる暑さを、感じ始める。

真っ暗な押入の中で不安を感じつつ、戸の向こうの様子を、音で探った。

しばらくすると、玄関ドアのガチャリという重い金属音とともに「ただいま」という男の声。おそらく旦那だろう。

俺は改めて、問題に直面したことを実感した。



「おかえりなさい、出張じゃなかったの?」と彼女。

「ああ、先方の事情で、電話で契約を受けてくれた。だから、来なくていいって」

「そう。それはよかったね」

「夕食を食べてたのか?」

「ええ、出張だって言うから先に」

「じゃあ、俺も夕食だ。お腹空いてさあ」。

それから、手を洗ったり嗽をしたりの音の後に、プシュッとビール缶を開ける音がして椅子にドサッと座る音。

旦那はくつろぎだしたようだ。このままではまずいぞ。俺は一体、いつになったら出られるのか?

押入の中はムシムシ。既に身体中から汗は浮き出ている。

旦那も暑いはず。風呂でも入らないか?

そんな思いをあざ笑うように、テレビの音がはじまる。旦那らしき男の声で、TVへのツッコミもはじまる。


それから、かなりの時間が過ぎた。テレビ番組もいくつか移り変わった。スマホの時計を見ると、21時。押入に閉じこもってから、三時間も経っている。

汗ぐっしょり。不快感は凄まじい。彼女からいただいたペットボトルも、空になりそうだ。

また、ここまでずっと暇。

緊張感は有るものの、することは何もない。ただただ、外に出るチャンスを伺っているだけ。スマホをいじるものの、じっとり汗をかいて集中できない。動画を見ようにも、イヤホンを付けると、聞き耳を立てられなくなる。

暇問題は大きい。

それにしても…。俺はむなしくもなった。

土曜日の夜と言えば、次回の授業準備をしたり、小説を作成したり、楽しく飲んだりしている。大切な土曜日の夜を、よそ様の団地部屋の押入に潜んで過ごすなんて。

そう思っていると、戸の向こうで、夫婦二人のしゃべり方の雰囲気が、変わった。

はきはきしゃべらず、ぼそぼそ小さい声でしゃべる。俺は、状況は変わったのかと思って、戸に片耳をべったりつけて、聞き取りやすいようにした。

小さな声で、「いいから」「後で」なんて女の甘えたような声。どうやら、夫婦でいちゃいちゃしているのだろう。

あれ?夫婦仲は良い?旦那に浮気されたという話しや仕返しのための浮気をする話しは、どこまで本当なのだろう。何やら、騙されている気もしてきた。

俺、何をやっているんだろう?


その時だ。

戸の向こうで旦那は言った、「飲んでいると、△△のラーメンを食べたくなった。今から行こう」と。

俺は、押入から出られる希望を感じた。

しばらくして、戸の向こうで、ガチャリと玄関ドアの重い金属音がした。それからは、何ら物音はしなくなった。


俺は、戸の向こうの様子を探りつつ、静かに引き戸を開けた。



押入から、キッチンを見通せる。

誰もいない。

俺は、押入を降りた。全身はひんやりした。

冷房の効いていないこの部屋も、暑いはず。でも、三時間も風の通らない押入に籠っていた俺にとって、心地よく感じる。


キッチンに行くと、鍋から湯気がゆらゆらしている。俺の食べかけたご飯は、流し台に置いてある。

俺は蛇口をひねり、水を何杯か飲んで、喉をうるおした。

二人が帰ってきたらまずい。

俺はとっとと部屋を出た。


幸い、廊下に近所の人等はいない。

また、電灯の点いていない真っ暗な棟なので、見つかりにくい

暗い廊下を歩いて、棟を出た。団地の敷地を横切って、バス停にたどり着いた。


だが、団地から駅へ向かう最終バスは、出た後だった。



最終バスが出たからと言って、タクシーは呼びたくない。


わけのわからない一日の締めくくりに、タクシー料金を払わされるなんて、あまりにもバカげている。


俺は意地になった。歩いて帰宅することにした。

上りかけの山道に有る、この団地。平野に有る駅周辺高層ビルの警戒灯を、見通せた。それは、地平線を意識する程に、遠くだった。俺のアパートは、駅周辺高層ビルたちの、さらに向こうに有る。

山道を下る。山に沿った平坦な道を延々と歩く。住宅はまばらに点在するようになった。さらに歩く。住宅の密度は増す。さらに歩く。街はずれとなる。しばらく歩く。賑わう繁華街に。

ここまでに1時間以上かかった。もう22時を過ぎていた。

全身くたくた。足首や付け根は重たい。喉はカラカラだ。


繁華街で寄り道をせず、さらに20分程歩いて、アパートへとたどり着いた。



こんな日はこりごりだ。

アパート玄関をくぐると、共用スペース。全部屋のメールボックスは、並ぶ。帰宅した際のルーティンで、俺は自分の部屋のメールボックスを開けた。


寿司の出前や不動産の紹介等、良く見るちらしたちが入っている。


だが、その中に、今までに見たことのないちらしも有った。アニメ風の狐が3匹、腹を抱えてゲラゲラと笑い転げている絵だ。

狐たちはみんな、色違いのリボンをつけているので、メスの狐だろう。

何の会社なのかどこにも書いてない。絵だけだ。

奇妙なちらしもあるもんだ。



それから、そのちらしは、他のちらしとともに、玄関前廊下に重ねた。

資源回収日になれば、紐でくくる。それまでは、生ごみを包んだり爪切りだったりに、使うことにしている。


それから買い物に出て、夕食。食べながら、一連の流れを振り返る。

年上美女に対して、どう報告すべきだろう?でも、年上美女の連絡先は知らない。また、人妻さんに対して、「挨拶もせずに帰ってすいませんでした」と謝ったりするべきなのだろうか?


結論の出ないまま何日か過ぎた。


まあ、放っておけば良いかな?



そう思っていたが、俺は、人妻さんの魅力にはまっていたのかもしれない。

ふと団地に行ってみようと思い立った。

仕事柄、朝は空いていることも多い。

朝なら、旦那と鉢合わせもしないだろう。まあ、人妻さんは平日朝、働きに出ているのか知らないけど。



或る平日の朝、俺は例の団地に行った。


いきなり、奇妙なことに遭遇した。

この前の棟に入ろうとすると、たまたま通りかかった団地住民の老夫婦に、声をかけられた。

老旦那さんは言う、「その棟には誰もいませんよ。この前、最後の住民は、出て行ったはずだよ」と。

付け加えるように老奥さんも言う、「この棟の付近で、きつねの目撃情報もあったよ。住み着いているかもしれないから、気を付けてね」。

「はあ」と適当に返事をした俺だが、そんなはずはないと思い直す。この前、人妻さんとこの棟の部屋で会ったのだ。


老夫婦の後ろ姿を見送って後、俺は棟へ入った。

すぐに共用スペースが有って、部屋番号を記したメールボックスがズラリと並んでいる。

だが、全てのメールボックスの口は、ガムテープでふさがれている。

老夫婦の言うように、誰も住んでいないのだろう。


俺は、共用スペースを通り過ぎて、人妻さんと会った部屋へ。

玄関扉の前に立つ。インターホンを押す。音は鳴ったものの、誰も出てこない。

俺は棟を出て、棟の周囲を一周した。

ベランダには、何も干されていない。どの部屋もカーテンを設置しておらず、部屋の中は丸見え。ただし、誰もいない。

本当だ。

老夫婦の言うように、誰もいないようだ。狐につままれた気分になった。不気味さすら感じて来た。

でも、妥当な想像もできる。

老夫婦の言っていた「最後の棟住民」こそ、あの人妻さんその旦那さんと考えれば良い。



さて。

団地に居たってすることがないので、帰宅した。

アパート自室に入ると、玄関脇に、この前のちらしが目に付いた。

色違いのリボンを付けたアニメ風の狐が3匹、腹を抱えてゲラゲラと笑い転げている。


以上「深夜の一人居酒屋【ロマン怪奇小説】」。

関連する話は「妖怪?深夜の或るコンビニにて【怪談】」へ。

他の話は「深夜のコンビニ【ロマン怪奇小説】」へ。



※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。

※本ブログの記事は全て、著作権によって保護されておりますことへ、ご理解のお願いを申し上げます。


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通称ナンバーマンを取り巻く怪奇現象【怪談】

この話は、やたらと時間を気にする、或る男の怪奇現象の話です。それにしても、誰がどんな夢を持っているか、わからないものです。


(分量は文庫本換算5ページ程。他の話は「本blog全記事の一覧」へ。)




第一章:深夜に出会った男|通称ナンバーマンを取り巻く怪奇現象【怪談】


多摩地方の警察署に勤務する俺(麦倉行・警察官・29歳)は、或る深夜、年下の同僚と、自転車パトロールをしていた。

今、古いビルが向かい合って立ち並ぶ、飲み屋の通りを走っている。通りの店は、大抵閉店している。24時間営業の店の灯りが何軒か、通りを明るくする程度。

空気は、動いていると暑さも感じるが、風が吹くと涼しい。時々、ドッと強い風も吹く。季節は、夏からの変わり目だ。



走っていると、前方に、中年の男が店の玄関前で座って、うたた寝しているのが見える。


俺と同僚は、自転車の速度を緩める。そして、男の前で停車。男は起きない。男が座り込んでいるガールズバーも、立て看板の電気は消えている。


風邪を引いてしまうぞ。また、男の側に有る手提げバッグは、口が開いている。防犯によろしくない。

俺は男に声をかけた。だが、起きない。大きめの声で、「風邪を引きますよ!」と、男の耳元で言った。


男は、はっと目覚める。

鈍い動き、回らない呂律で、「ん?お巡りさん?ああ、俺寝てた?」。それから、スーツの袖をめくって、自身の腕時計を見る。



俺は、男の時計が、上等なブランドものだと、気が付いた。

スーツも、上等ブランドのカジュアルスーツだ。全身で数十万円くらい。

一方、手提げバッグは、100均のものかな。

口が開いているので中を覗く。仕事のものだろう、ユニフォームだ。おそらく、日雇い仕事だ。



俺は、男に職業を質問した。

男は、眠気を吹っ飛ばすためか、強い口調で「日雇いだよ」言う。


第二章:なぜ?やたらと時間を気にする|通称ナンバーマンを取り巻く怪奇現象【怪談】


失礼だが、日雇い仕事をしていると、全身をブランドで着飾るよりも、他のことにお金を用いたいのでは?

多額の不労所得が有るのか?或いは、盗品だったり、お金を脅し取っていたり?

警察は、疑うのも仕事なので、仕方ない。



俺は探りを入れるように尋ねた、「良い時計ですねそれ、随分儲かる日雇いもあるんですね、俺も転職しようかな」。



男は、「バーカ、日雇いで手に入れたんじゃねーよ」と。

俺は、「じゃあ、投資で成功したとか競馬で当てたとかですかね?」と言い、男の挙動を探った。

男に、怪しい素振りは無くて、「そんなんじゃねえよ」と言いながら、立ち上がる。

俺は、「一人じゃ危ないですよ。送っていきますよ」、と食い下がる。

「盗品じゃねえよ、疑ってるんだろ?」と、男は言う。



男は、また腕時計を見る。しばらく沈黙。


そして歩きだした。


「随分、時間を気にするんですね?」、俺は尋ねた。

男はにっこり笑って言う、「ああ、3時22分33秒だ。動き始めは33秒と決めている」。


俺は何を言いたいのか解らなかった。


第三章:どこまで本当?謎のお金|通称ナンバーマンを取り巻く怪奇現象【怪談】


俺と同僚は、自転車を押しながら、男の帰宅に付き添った。男は、手をポケットにつっこんで歩く。

歩きながら、男は、自身の暮らすアパートの住所、男の登録している会社の電話番号や住所も教えてくれた。



やがて飲み屋街通りを抜けて、横断歩道へ出た。

横断歩道を越えると、住宅街。

男の住所に近づく。

赤信号なので、立ち止まる。



その時。正面から、強い風がドッと吹いた。

風に耐えること数秒、立ち止まっていた男だが、左に向いて歩きだした。



「あれ?そっちだとあなたのアパートには遠回りですよ」俺は言った。


男は、「遠回り?強い風に向かっては歩かないよ。そっちに歩くなって言われているんだよ」。


「誰に?」と俺。

「さあ、神様かな」と男。


歩き始めの33秒といい、向かい風のメッセージといい、この男は、時々奇妙なことを言うもんだなと、俺は思った。



それから、コンビニの前を通る。男は、「ちょっと待ってね」と言って、入った。

外で待っていた俺と同僚だが、男はうれしそうに出てきた。手には袋。

「見てくれ、ピリ辛唐揚げの揚げたてだ。俺はね、辛い食べ物が好きなんだ。うたた寝して身体は冷えてたからちょうどいい」とは。

「そうなんですね」俺は適当に応えた。



唐揚げを食べながら、また歩き出す。

食べながら男は言う、「お巡りさんさあ、俺がどうやってこの腕時計を手に入れたか、教えてあげようか?」。

「よろしければ」と俺は尋ねた。

男は腕時計を見て、しばらく沈黙。それからしゃべりだした。どうせ、33秒を待ったのだろう。



「さっきから俺が33秒でしゃべったり、風のために方向を変えたり、変なな奴だと思ったろ?」。

「まあ、珍しいですよね」と俺。


「でもさあ」、男は反対の手で唐揚げを指さしてアピールして、「辛い物好きな俺がこれを買えたのって、33秒で歩き出したり、風のために道を変更したからだよね」。


俺は、この男は占い好きだと判断しつつ「そうですよね。でも『運いい』と感じることって、よくありますよね。風向きに逆らって歩いたら、もっといいことあったかもしれませんよ」と言った。


男は言う、「一理あるけどさあ、この腕時計はどうやって手に入れたのかっていうとさ、拾ったんだよ。

何年も前の話しね。街を歩きつつ、明日仕事を欲しいって会社に電話しようとしたら、一斉にカラスが鳴いてうるさくて。さてカラスから離れたから電話しようと思ったら、自転車が俺のすれすれを通ってね、妨害された気分だったよ。やっと電話がつながったと思ったら、話し中。しばらくして電話しようとしたら、スピード違反を追跡するパトカーの大音声。

これは明日の仕事に行くなということだろうと思って、生活費もギリギリだったけど、仕事に行かないことにした。

翌日、仕事に行かずにアパートに居たけど、暇だった。ちょっとぐらいの出費は大丈夫だろうと思って昼飲みに出た。

飲み屋街を歩いていたら、ホステスが落としたんだろうな、指輪が落ちてた。店の前に落ちてたんで、店に入ってママに差し出したら、多分昨日で辞めた娘のものだろうけど、事情あって電話しづらい。あげる。どうせ安物だ」なんて言う。

それで、指輪を質屋に持って行ったら、10万円になって。



それ以来、周囲の様子から、神の声とでも言うものだろう、探ることにしたんだ。

すると、スクラッチに当たるやらお礼金を貰えるやら、いろいろあって。

今では、生活費だけを日雇いで稼いでいて、それ以外に仕事はしていないのにだよ、1000万円くらい貯金もできちゃって。今でも増え続けているよ。

で、腕時計とか、ちょっとお高いものとかを、買うようになった。だから、この腕時計は、拾ったようなものだよ」。

果たして、中年男の話しはどこまで本当か?


第四章:そして壮大な理想を抱く|通称ナンバーマンを取り巻く怪奇現象【怪談】


男は、「俺の登録している会社は、24時間営業のはず。俺を疑っているんなら、電話してみれば?」という。

それで、男の登録していると言う、会社に電話をしてみた。男に、電話口の職員さんに話しをつけてもらってから、代わってもらう。



相手は、女性職員だった。俺は部署と名を述べてから、いろいろ質問した。

男がこの会社に登録していることは本当だし、目立ったトラブル等も起こしていないとわかった。



ただ、職員さんも、男を怪しいと思っているらしい。

ひそひそ声になって、「そこにいる○○さん(男)にはわからないようにお返事いただきたいんですけど…」と前置きする。

それで、職員一同が男を怪しいと思っていること、その理由をしゃべる。



「○○さん(男)は、なぜか金回りが良いんですね。

それと、現場では、「ナンバーマン」と呼ばれているそうなんです。腕時計の秒針だけでなくて、昼食代の合計やらいろいろな数字も気にしていることから、そう呼ばれているそうです。

一番気になっていることなんです。○○さんは、いろんな人に言っているんです「もうすぐ会社を作る。その会社でうまくいったら、次は政治に携わる。どこかの国で指導者になるのも良い。みんなで運の良い行動を取ったらすごい集団になるだろう」なんて、言っているみたいなんです」と。



それから、適当に挨拶して、電話を終える。少し離れた所で、同僚としゃべっている男を見た。

閉店したガールズバーの前で寝ていた中年男。その男に謎の貯金と政治リーダーになりたい夢。

実現したら、いや、してしまったなら、どんな国になってしまうだろう。

まあ、あり得ないだろう。あり得ないよな…?


以上「通称ナンバーマンを取り巻く怪奇現象【怪談】」。

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※本小説はフィクションであって、実際にある土地名や団体等とは一切関係ありません。

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或る縄文土器の秘密【コズミックホラー小説】

この話は、奇妙な形をした、或る縄文土器をめぐる話です。

(分量は、文庫本換算10ページ程ですが、以下目次をタップ・クリックでジャンプできるので、しおり代わりにどうぞ。他の話は「本blog全記事の一覧」へ)。





第一章:或る旧家の古い蔵に|或る縄文土器の秘密【コズミックホラー小説】


稲岡良仁(29歳・多摩文理大学考古学科講師)は、多摩地方の或る旧家を訪れた。

たたずまいは、まさに「代々続く豪農の家」。木造の古くて大きなお屋敷を、ぐるりと石垣・木・瓦の塀で囲っている。

現代的な戸建てやアパートの並ぶ住宅街に有って、この旧家は、この辺りが農村部であったこと、自分たちこそは古くからの住人であることを、物語っているようだ。

また、敷地内には、お屋敷よりもさらに古い、蔵も有る。



この旧家の現当主の男(50代半ばくらい)が、古い蔵を整理していたところ、奥から奇妙な形をした土器が出てきたため、多摩文理大学に連絡をしたのだ。


現当主は、古くてそして迫りくるような立派な蔵の前に、円形のぼやけたような奇妙な土器10点程を、シートの上に広げて、稲岡にいろいろと説明している。

先代の兄弟だったかに大学教授がいたらしくて、その人の収集したものではないのかとも言う。


説明を聞きながら、稲岡は、10 点程有る円形のぼやけたような奇妙な形をした土器を、順々に手に取っては置いて、比べてみた。

10㎝四方に収まる大きさ。ペンダント等のように身体に身に着けて飾るものかどこぞに飾るものかだろう。いずれにせよ、実用品ではなさそうだと思う。

また、土器を並べて見ると、何と表現すべきか「ぼやけ具合が徐々に絶妙になっている」とも思う。そもそも、10点それぞれに違う意味が有るなら、形をもっとはっきり区別するだろう。

また、技術レベルは、農業社会より前の時代のものだろう。つまり、土器造りの専門家のいない時代の技術だ。一方で、劣化具合等からして、作られた年代は、それほど古い時代とは思えない。この古い蔵の建てられた年代からしても、江戸時代後期~明治時代ではないか?


全体として稲岡の見立ては、

・江戸時代後期~明治時代に、農業時代以前の技術で土器を作ってみた。

・何度も制作する内に慣れてきて、ぼやけ具合等は絶妙になった。

といったところだ。

もちろん、詳細調査をしないと断定はできない。また、円形のぼやけた形の意味も何に用いられたものかも分からない。



それと、稲岡には、円形のぼやけた奇妙な形の土器は、他で見たか聞いたか覚えが有った。



そう言えば、自身の勤める多摩文理大学考古学資料室や書庫に、円形のぼやけた土器がいくつかとそれらを記述した古い記録が有ったはずだ、と思いだした。


第二章:郷土史に詳しい老人|或る縄文土器の秘密【コズミックホラー小説】


①出会い


稲岡が旧家で土器に触れている頃、梅雨一(つゆはじめ・市役所土木技官・27歳)は、同市内で、自転車を走らせていた。


同市内に住む、同市歴史に詳しい老人に会うためだ。


駅周辺繁華街を抜けて、江戸時代を想像させるような古い商店街を抜けて、やがて街道に出て、街道に沿って並ぶ戸建てや古い中小ビルの合間を自転車で走っていると、街道を横切る大きな川によって、景色は広く開けた。

川にかかる橋をわたりながら、左側を見る。川は、遠く地平線へ向かって延びて、その先に、地平線を覆うように山々が連なる。

あの山々の麓の辺りに、目指している老人の小屋は有る。


橋をわたると、また戸建てや古い中小ビルが、街道の左右に並ぶ。

そんな街道に沿って、さらに自転車を走らせ続けた。



走らせながら、老人との出会いを思い出す。

梅雨一は、同市市役所で、土木技官として勤めている。その傍らで、休日等に、趣味の歴史研究をしていた。

特に、仕事から派生して、郷土史の研究をよくする。例えば、市の建設事業で、現場となる土地とその周辺について調査をすることも有る。調査の中で、土地の歴史を調べることも多い。歴史好きである梅雨は、自身の仕事範疇をはみだす程に、興味を持つことも多々有る。休日等に、その興味を果たす調査をするのだ。



今回の調査のきっかけになったのは、この前の水曜日の仕事。


市道の山裾の地点を訪れた。

そこより先は、折り重なる山々に分け入って、道路の左右には山が迫る。山には、土砂崩れ防止コンクリートが覆っているものの、上方では木々がはみでており、枝々を炎のように四方八方に茂らせている。いつかコンクリートを破壊するような、くすぶる自然の力を感じさせる。


そんな場所にも家は有る。

梅雨たちが作業をしていると、一人の老人が散歩をしていた。70半ばくらいだろうと、梅雨は思った。

老人は、作業服を着ている梅雨に目が止まって、「何の工事か?」と尋ねる。

梅雨は、名刺をわたしつつ作業の内容を説明する。老人は「松下といいます」と言った。

これをきっかけに、梅雨と老人は立ち話になった。

老人は、近くの小屋で一人暮らしであること、あちこちに転々と引っ越しながら暮らしているものの生まれはこの市内だということ、そして、市内の明治時代の歴史に詳しいこともわかった。


梅雨は老人に「歴史の研究をお好きなんですか?」と尋ねた。老人は笑いつつ、「もともと大学で考古学の教授だった」と言った。

梅雨は失礼な質問をしたことを謝った上で、歴史好きの自分は休日に趣味の歴史研究をしていることを伝えて、時間の有る時にでも、この市の歴史話等を聞かせて欲しいことをお願いした。

老人は、快く承諾してくれた。



それで互いに都合のいい今日、梅雨は、老人の家へ向かっているのだ。


②謎の論文?寂しい場所の一軒家


随分と、自転車で街道を走っていた梅雨だが、周囲の住宅も疎らになった。


それから、街道を内に入った。住宅はどんどん疎らになる。


さらに走ると、家自体見なくなって、風にそよぐ木々の音が支配する世界になった。駅周辺では遠くに見えていた山々も、今では、見上げるように迫っている。


そんな、自然の勢力の迫る細い道沿いに、寂しく一軒の小屋が有った。目指していた、老人の小屋だ。

梅雨は、自転車を家の前に停めた。見上げた空は、雨こそは降らないが、灰色の雲が覆っている。



玄関前へと立つと、インターホン等は無いので、大きな声で挨拶をした。

老人は、出てこないものの、返事は有った。「入ってすぐの部屋で待っていてくれ」、と大きな声で言う。

梅雨は、玄関ドアを開ける。小さい玄関から、狭い廊下が真っ直ぐに伸びている。上がってすぐ左手にドアが有る。

この部屋のことだろうと思い、梅雨は上がった。



部屋に入ると、そこは書斎だった。


古い木の机が部屋の奥に有って、部屋中を大きな本棚がぐるりと囲って、古い本がぎっしり並んでいる。

並んでいる本は、さまざま。説話、歴史書、歴史時代を越えて人類登場以前の地質学、古生物に関するもの、また、ニュートン力学や相対性理論や量子力学等といった物理学に関する本も。

古い書籍も多くて、本棚全体で、アンティークの価値すら漂う。


また、本棚の一角に、表紙のしっかりした出版物ではなくて、紙に穴を空けて紐を通しただけの書が並ぶのを見つけた。他の出版物同様、紙が茶けているので、古いものだと分かる。


梅雨はそこに歩いて、書を手に取って中を眺める。印刷物ではなくて、インクで手書きされたものだった。

パラパラめくっていると、同市の歴史の記述を見つけた。それで興味を持ち、パラパラを止めて集中した。


同市の山中で発見された、土器の記述だ。内容は、

・縄文時代中期に作られたもの。

・発見場所周辺に集落跡等は無くて、おそらく儀式等のために、山に持ち込まれたものと推測される。


といったもの。

その記述の後に、土器のスケッチも有った。何と言うのだろう、円形のぼやけたような、奇妙な形をした土器だ。

スケッチの横には、同土器を数学的図形で描いて、輪郭の曲率等数学的説明をしている。

全体として、論文のようにも思った。


梅雨は、スケッチや数学的図形を見つつ、何を表しているのか等想像を巡らす。でも、さっぱりと検討もつかない。



その時、ガチャリと音がして、ドアは開いた。

部屋に近づく気配もない中、いきなり音は響いたので、梅雨はびっくりした。

びっくりした勢いで振り返ると、例の老人が立っている。


「驚かせてすいません」。老人は梅雨と目を合わせながら、一呼吸微笑んで言った。

おぼんを持っていて、そのおぼんの上には湯呑が二つ乗っている。片手でおぼんを支えつつ、老人は電気のスイッチを押した。薄暗い光は、部屋をぼんやり照らす。

「その論文は、私がずっと昔に、作成したものです」。老人は優しく、でも誇らしそうに言う。



③歴史研究?オカルト研究?難しい話


梅雨は一瞬疑問に思った。

見立てでは、老人は70歳半ばぐらいだ。この手書き論文は、パソコンやワープロ等の普及する以前に作られたものだろう。となると、この老人が30代くらいに作ったもの。つまり、今から40年程前に作ったものか?

一方で、見立てでは、この手書き論文はもっと年季のあるものにも思える。

もしかするとこの老人は、70代半ばよりも、もっとお年寄りであるのかもしれないと、梅雨は思った。



梅雨は、書を手に持ちながら、口を開く、「以前お会いした時、元学者とおっしゃっていましたよね。こちらの論文は、あなたの作成なさったものですね?」と。

老人は、梅雨を部屋の中程のテーブルにうながしつつしゃべる、

「ええ。

私は、始めは物理学者だったのですが、その論文の中に有る円形のぼやけた奇妙な縄文土器の存在を知ってからは、すっかり魅了されて、考古学の道へと入りました。

まあお座りください」。

老人は、お茶とせんべいをテーブルに置いて、座る。梅雨は、お礼を言いつつ、向かいに座る。



一口お茶をすすって、老人はしゃべりだした。「歴史の勉強はいいですよね。国のことや地域のこと、人類のこと等、新しい世界を知れます」。

「専門は縄文時代の考古学ですか?」と、梅雨。

「お持ちの論文に有る、円形のぼやけたような奇妙な形をした縄文土器の研究に、特に力を入れました。

それから、新発見の喜びをおさえられないように、次々しゃべり出す。



「結論から言うと、円形のぼやけた土器は、縄文時代の信仰の一つです。


私は、物理学者だった頃に、趣味で、昔話の研究をしていた。

昔話は、文字も無い太古から語り継がれるものでもある。地域の事情や暮らし方の事情等も、ストーリーに反映されている。

或る昔話のこの表現なら、狩猟・採集時代のものであり縄文期から伝わっているのでは?この表現は、温暖な地域で暮らす者の発想では?

そんな取り止めのない想像を、趣味でしていた。


その内に、妙なことに気が付いた。

昔話の中には、いかにもフィクションらしい超常的現象が起こるものだって多い。だが、いくつかの昔話では、超常的現象はフィクションではないかもしれないと思った。

話すと長くなるので省略をする。昔話を、時代背景等を基準に時代順に並べたり、伝播の仕方や速さ等を計算すると、交流の無かった地域どうしで同時に、似た超常的現象を扱った昔話も見られた。

もしその超常現象は実際に起こったものだとしたら、物理的には、どんなエネルギーが働いているのか?


私は、そのエネルギーを、数学的に仮定したり計算したりを重ねた。

すると、或る図形を描くことになった。

その図形とは、あなたのお手になっている論文に有る図形。円形のぼやけたような奇妙な図形なのです。


でも、驚いたのはそれからです。



④リアリティの有る歴史話を楽しむ!難しい話はさておいて


私が図形を導きだしてから、何年か後。

相変わらず、趣味で、昔話や歴史の論文を読んでいた。

そこに、多摩文理大学の考古学研究チームが、〇〇市(梅雨や老人の居る市)の山奥で、奇妙な縄文土器を発見したと書いて有ったのだ。

その土器の写真も掲載されていた。その形は、私の導き出した図形と一致したものだったのだ。

つまり、縄文人の中に、奇妙な円形のぼやけた土器の制作に至った者がいたということなのでしょう。

私は、図形を導きだすために微積分等を用いた。でも、縄文人が現代人の知る数学を知っていたとは考えられない。よって、野生の勘というのか、この宇宙から何かを感じ取ってのことなのだろう。



それから私は、縄文時代の考古学の道に進みました。

次のテーマは、円形のぼやけたような奇妙な形の土器を、私自身で作り出して見ること。

何度も何度も土器を作る内に、徐々にぼやけ具合も上手くなりましたよ。いくつかは、今でも、昔住んでいた家の蔵に有るやもしれませんね。

どれも、失敗ですけどね。」

喜々としゃべる老人だが、梅雨にとっては、何の話しなのかつかめない。ただひたすら、老人のエネルギーに、呆気にとられていた。



老人は、そんな梅雨の表情に気が付いて、話しを中断。「すいませんね。しゃべり過ぎました。この話しになると、ついね」と言う。

梅雨は、「ええ。凄く大変な発見をされたようですね。ただ、僕には難しすぎますね」等当たり障りない返答をした。



老人は微笑んで続ける。

「それでは、江戸時代の終わり頃以降の、この地域の歴史の話でもしましょう。

戊辰戦争の折に官軍からはぐれた一隊がこの付近を通ったとか、天保期において一揆を企てた村が有る等々と、私は色々知っていますからね」。



老人のしゃべり方は、土器を語る時のような激しいものではなくて、穏やかなものになった。

ただ、リアリティは凄まじい。梅雨は、老人の話しに引き込まれていった。何でも知っているようなので、たくさん質問もした。


第三章:大学に所蔵の古い記録


梅雨が老人と歴史談議をしている頃。

多摩文理大学講師稲岡は、自身の研究室デスクに戻っていた。そして、同大学図書館に所蔵されていた、古い書を読んでいた。

また、デスクには、旧家から持ち帰った、円形のぼやけたような奇妙な形の土器も有る。

書の内容と目の前の土器と、関連有るものか見比べつつ、掻い摘んで読み進めている。



書の著者は、多摩文理大学の元教授。名は、時田信一郎。現在は、お亡くなりになっている。

内容は、円形のぼやけたような奇妙な形の土器を研究していた、師匠教授の記録。晩年、人生を振り返って、師匠教授のことがずっと気になったままであったため、この記録を残したようだ。


(以下、かいつまんだ内容を現代語で。)


『〇〇市(稲岡が訪れた旧家が有りまた梅雨と老人が居る)で発見された、円形のぼやけたような奇妙な縄文土器の研究をはじめてから、松下先生の熱意は凄まじく、我々助手たちは、支えることをできなくなる程だった。

明治三十九年七月九日』


『松下先生が円形のぼやけたような奇妙な形の縄文土器の研究をはじめて、二十年程は過ぎた。私は松下先生から独立して教授の地位を得ていたが、交流等有った。

土器について、松下先生は何かを発見したようであって、満足そうだった。

だが、その発見内容のことを、誰にも言わないのだ。私が理由を尋ねると、その存在を理論的に証明しただけであり、実験で実証する必要があると言う。

それなのに、しばらくして松下先生は退職された。70歳と高齢ではあったが、実証した様子は無さそうであり、研究を諦めになったのだろうかと心配になった。

大正十四年九月十八日』


『私は、幸運のおかげで90歳を迎えた。

病床の私は、松下先生のことを考えている。

松下先生は、円形のぼやけたような奇妙な縄文土器の研究の結果を、人に伝えることをおそらくはせずして研究の世界から身を引いた。また、その後の松下先生の行方について、私は知らない。

松下先生が何を発見したのかを知れなかったことは、私の研究者人生の内で、杭の残るものの一つである。だからふと今、松下先生のことや縄文土器研究のことを思い出したのだろう。

最近、松下先生の孫と名乗る70歳程の男が私を見舞いに来られた。私より25歳年上の松下先生の孫であるのなら、年齢は合点がいく。

だが、何年も研究を共にした相手を間違える程、私は鈍感ではない。あれは、松下先生ご本人だった。松下先生は、70歳くらいからお歳を取られていないというのか?

昭和十九年八月十九日』。


この記述を最後に、記録は終わっていた。稲岡は、その古い記録を閉じた。



稲岡としては、土器研究の参考になるかと思ったのに、自伝的な内容も多い上に、トンデモオカルトじみた話しで締めくくられるというものに、多少落胆した。

それでも、松下先生という者が、円形のぼやけたような奇妙な形の土器について何かを知っていることは分かった。



他に、松下先生の論文はないかと、稲岡は腰を上げた。


第四章:或る警察官の深夜の出動|或る縄文土器の秘密【コズミックホラー小説】


梅雨も稲岡も就寝中の午前3時頃。

〇〇市内(稲岡の調査した旧家、梅雨の勤める市役所、老人の小屋が有る)の交番に勤務する麦倉行(むぎくらこう・28歳)は、或るアパートへと、同僚とともに自転車で向かっていた。近隣住民から、一室が騒がしいという通報が有ったのだ。


駅前繁華街を横切る大通りに沿ってしばらく進んで、細い路地へと入った。

静かな住宅街に風景は変わる。中層のマンション、古いアパート、戸建て等が、一車線程の夜道に延々と並ぶ。

街灯は点々と照らす程度の暗い道だが、一か所だけ青い灯りにぼんやりと照らされて、目立っている。



麦倉と同僚は、青い灯りのもとに到着。中層マンションの2F一室から青い灯りは漏れて、夜道を照らしていた。

ここだ。


二人は自転車を停めて、その部屋へとアパート玄関をくぐって、階段を上る。


部屋の前に立つと、中でドタバタしていることが、音でわかる。玄関の外に立つ麦倉にも、すぐにわかる程だ。


麦倉は、インターホンを押した。

中から返事がある。ただし、すぐに出て来ない。

麦倉はふと、振り返る。駅周辺に有る高層ビルたちは、遠く夜空で地平線を隠すようにそびえて、屋上警戒灯をゆっくりと点滅させている。眺めているとどこか遠くで、車のエンジン音や機械音等がこだまする。基本的には静かな夜中の風景だ。


しばらくするとドタバタは止んで、玄関へ向かってくる足音がして、ドアが開いた。

真っ赤なタンクトップを着た、はつらつとした40歳程の女が出てきた。手にはタオルを握って、多少息も上がっている。



麦倉は、ドタバタする音が外まで音がもれて来ていることを伝えた。

すると、女は言う、「ごめんね。今日は、ちょっとうるさかったよね。警察にクレームでも有った?解ってるんだけど、重要な儀式の日なんだよね」と。

肩にかかる程度に伸ばした黒く太い髪を、整えながらしゃべる。



「重要な日ならね、クレームに繋がるかもしれないことは、しない方がいいですよ」。麦倉は応えた。

「そうね。まあ儀式はさっき終わったからいいの」、そう言って女は微笑む。女の目線は、麦倉の目から、麦倉の鍛えられた胸筋をチラ見する。

「じゃあ、もう騒がないんですね。約束ですよ」と言う麦倉に、女は「ええ」と適当に応える。



それにしても。

麦倉は、この女の頭越しに、天井あちこち、絵がつるしてあることに気が付いた。奇妙な絵で、円形のぼやけたような形が描かれている。儀式の話しと合わせて、普通の部屋ではないと感じた。

麦倉は絵を見ながら、「あの絵は何ですか?それと、さっきから言っている儀式って?」と尋ねた。

「この前旅行で小笠原諸島に行ったんだけど、好奇心でさらに南に或る公海上の無人島に漁船で連れていってもらったんだ。

そしたら、そこで原始人みたいな男が踊っていてさ。はじめは不気味だったし、漁船の船長さんも知らない人だって言っていたけど、何だろう、見ているとパワーを感じたのよね。

思い切って話しかけてみると、自分で作った木の船で、自由に小笠原諸島や沖縄やさらに東南アジア辺りを、漂流して暮らしているんだって。原始人の生き残りみたいでしょ。

男は、首から土器を下げていたんだけどね、あの絵のような形をした。それを見ているとね、パワーをもらったような気になったのよ。

旅行から帰って、男の下げていた土器を絵にしたり同じ踊りを踊ったりしているのよ。そしたらね、日に日にパワーが出てくるようでさ。

ちなみに、今日は結婚記念日ね。旦那は単身赴任中だけど。それで旦那のパワーのためにも踊っていたってわけ」。


「はあ…」。麦倉は適当に返事をした。絵に気づいてから、麦倉の意識は、女よりも絵に引き込まれていた。

見る程に、疲れはみるみる飛ぶようだ。いや、それどころではない。中学時代にでも戻ったように、軽い身体になったようにも感じる。


以上「或る縄文土器の秘密【コズミックホラー小説】」。

関連話は「原始人?或る無人島で【コズミックホラー小説】」へ。

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